
「――他人に聞かせられないようなこと、言うつもりだったんですか?」
「……馬剃さん、いまの発言も人には聞かせられなくない?」
自分を好きな相手と話すのはわりと楽しい。
俺がそんな真理に目覚めた矢先、小麦色の風が目の前を駆け抜ける――。
「ターゲットは小麦色」「八奈見・ラーメン・食べ歩き」「温水佳樹生誕祭20●●」「間違いだらけのパジャマパーティー」などなど、バラエティに富んだ小篇を収録。9巻にたしかに繋がる、オール書き下ろし短篇集!
一学期終盤、迫るテストと夏休み。話によって主人公が変わる短編集ではあるものの、時系列はちゃんと8巻の続きになっている正しく8.5巻な短編集。
高校二年生も三ヵ月が過ぎ、そろそろ進路を意識しだすのは温水たち文芸部員も同じ。それぞれに進路を見定め、豊橋から離れるつもりの何人かの部員たちが、別れの予感を感じさせる。
また、8巻のメインイベントであった天愛星の告白の影響が色濃く出ている。直接聞いたわけではなくても何かあったことは察しているヒロインたちが、温水に探りを入れたり積極的に仕掛けて見たり。
そんな中、最も押していたのは焼塩ちゃん。夜景を見に二人で抜け出すとはやりますね。ちゃんとヒロインすれば普通に可愛いんだよなあ、この子。スキンシップは最も多く、妹ちゃんの覚えもめでたく、母もノリノリ。これは一歩リードか?と思ったら、終盤で八奈見さんが追い上げ気配。これはそろそろパッケージヒロインの本領発揮が見られるか? まだ前部長が忘れられない小鞠は基本不参加かな。常に斜め上、もしくは斜め下に突き抜けてくるシリーズだからどうなるかは分からないけど。
それにしても、モブの中のモブだった温水が一年でツワブキ高校一の女の敵まで上り詰めるとはね。主人公補正って恐ろしいな。
なんて短編集らしからぬ清く正しい青春ラブコメディをしていた巻だった。……大枠で見れば。細部を見るとやっぱり残念なのがマケインクオリティ。
最も輝いて?いたのは、もちろん我らがカロリークイーン八奈見さん。短編集で時間の連続性が薄いことをいい事に、それはもう食べに食べまくっていた。甘味は少なめながら炭水化物と揚げ物はがっつりと。1巻辺りのカロリー計算をしたら過去最高を記録することはほぼ間違いないだろう。この短期間でラーメン何杯食ったんだこのJK……太る太らないの前に病気になりそう。
意外な顔合わせで予想通りの化学反応を起こしていたのが、佳樹と白玉の妹キャラコンビ。どちらも何か行動を起こすと何故かサスペンスホラーになってしまう二人は顔話合わせた瞬間からバチバチバトル。絶対零度の言葉の応酬に背筋が凍る。あの佳樹を慄かせる白玉リコさん恐るべし。
次回は恐らく夏休み編。花火大会で一波乱ありそう。