「リベリオ・マキナ ―《白檀式》水無月の再起動―」ミサキナギ(電撃文庫)
対吸血鬼戦闘用絡繰騎士《白檀式》――ヘルヴァイツ公国が誇る天才技師・白檀博士の“五姉弟”は欧州を吸血鬼軍の侵略から救う英雄となる……はずだった。
十年ぶりに目覚めた“失敗作”、第陸号・水無月は想定外の戦後を前に愕然とする。起こるはずのない暴走事故により、“虐殺オートマタ”として歴史に名を刻んだ五体の姉兄たち。さらに大公と吸血鬼王による突然の和平を経て、公国は人間と吸血鬼が平等に暮らす世界で唯一の共和国へと変貌を遂げていた。
亡き博士の娘・カノン、吸血鬼王女・リタとの出会いを通じ、新たな“日常”を受け入れていく水無月だったが――。
第25回電撃小説大賞《銀賞》受賞・オートマタの少年と二人の姫が織りなす、正義と反抗のバトル・ファンタジー起動!!
人間と吸血鬼が平等に暮らす国ヘルヴァイツ公国。吸血鬼を倒すために作られたオートマタ《白檀式》の水無月と、《白檀式》を作った博士の娘・カノン、水無月に求愛する吸血鬼王女・リタは、数奇な出会いを経て、吸血鬼の一派が起こす革命に巻き込まれていく。
という、中二心をくすぐる世界観や設定は良かったんじゃないかな、たぶん。
キャラクターも、盛り上げ方も、気を使うポイントも、尽く好みと合わなかった。
でも好き嫌いの前に、格好いい設定をスタイリッシュに書くには、単純に技量が足りていないと思う。
以下、文句言ってるだけ
続きを読む「鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王」冬月いろり(電撃文庫)
空間が意思と魔力を持ち、様々な魔物が息づく世界・パライナの北端に、誰も訪れない《最果て図書館》はあった。
記憶のない館長ウォレスは、鏡越しに《はじまりの町》の少女ルチアと出会い「勇者様の魔王討伐を手伝いたい」という彼女に知恵を貸すことに。
中立を貫く図書館にあって魔王討伐はどこか他人事のウォレスだったが、自らの記憶がその鍵になると知り……
臆病で優しすぎる少女。感情が欠落したメイド。意図せず世界を託された勇者。
彼らとの絆を信じたウォレスもまた、決戦の地へと赴く――
これは、人知れず世界を守った人々のどこか寂しく、どこまでも優しい【語り継がれることのないお伽噺】
第25回電撃小説大賞《銀賞》受賞作
訪れた勇者に力を授ける図書館の館長ウォレスと、勇者の旅立ちを後押しするはじまりの町の魔法使い見習いルチア。勇者が魔王に挑む為のサポートをする、裏方の登場人物たちを主役にした物語。
あとがきではファンタジーと言っているが、ゲーム内の世界、ファンタジー系RPGの世界の方がしっくりくるかな。ゲームで一度しか訪れない場所のNPCが普段何しているのかを想像するのは楽しいもの。その想像を人と人との繋がりを軸にして膨らませたのが本作だと思うので。初めの町の少女と終盤の場所の人物を繋げてみたり、初めの町の近くの序盤には倒せない中ボスと初めの町の少女を友達にしてみたり。
感想としては、
文章に癖がなく読み口のいい作品で、自分のことよりも他人の幸せを先に考えてしまう優しい子たちが織りなす物語は、メイン二人の交流やそれぞれの悩みをお互いが影響しあって乗り越えていく姿に心温まる。それに新人賞には珍しく、綺麗に一冊で収まっているので読後感がとても良い。
ただ、新人賞には何か光るもの、オリジナリティを求めてしまう自分には、よくあるタイプの話を無難にまとめた物語と感じてしまい、物足りなさの強い作品だった。
ん?次巻があるの? 世界が救われて、みんな収まるところに収まったのに。文章は上手いし優しい雰囲気もいいので、これの続きより次回作に期待したいが。