謎の花火大会
朝からバンバン五月蠅いなーと思っていたら、そこそこ近くで花火大会だったらしい。検索には引っかからなかったので、詳しい場所は不明。
花火は難しい。
ブレるし、光量も足りないかな。
野島芳生は社会心理学科の准教授今井由里子の研究室へ見学に行くため、東央大学渋谷キャンパスを歩いていた。すると人だかりが出来ていて、何事かと事情を聞いてみると女子トイレが盗撮されたらしい。容疑者は猿顔を真っ赤にしながら無実を叫んでいる。研究室に着くと、先程の猿顔は富岡といい、ここの学生だとわかる。状況と事情を聴いただけで、由里子は富岡の無実を証明するという……。
社会心理学科の女准教授が、学生が持ち込んだ事件をズバッと解決する短編連作の痛快?探偵物語。
東京の治安が現実より少々悪かったり(よくもまあ人が死ぬこと)、大学生の生態が一昔どころか二昔か三昔前のようだったり(ボロ学生寮のラウンジで男女混じって徹マンとか、今の大学生でもするのかな? イメージ出来ないが)、主人公の学生が小五郎さんかというくらい事件を集めてしまう体質だったりと、現代劇ながら現実感の薄い演出濃いめのタイプの作品。
そこはエンタメ小説なので面白ければ何でもいいのだが、問題は探偵ものとしては致命的に面白くないこと。
准教授が研究室内で学生たちに推理を聞かせる話なので、安楽椅子探偵にカテゴライズされるのだろうが、その推理が穴だらけ。無茶な推論に鬼教官と言われる切れ者美人のキャラクター性で、強引に説得力を持たせているようにしか感じない。なので、探偵ものの華である解決編がまるで美しくない。ものによっては白ける。
暴論でも自分で動いて解決するタイプの探偵ならコメディになるんだろうけど、安楽椅子探偵は推理の論理的な説得力が命だろう。
それでもキャラクター小説として読めば、と思ったのだが、
推理は滅茶苦茶なのに偉そうで、学生に安くないお菓子を貢がせる女准教授は好きになれる要素がなく、主人公の野島は話によって別人に思えるくらいキャラクターが安定しない、ゼミの先輩の一人は本気でウザいしで、残念ながら好きになれそうな人物はいなかった。
色々な意味で好みに合わない作品だった。
高一の夏休み。事故にあった秋山野要はベッドの上で目覚めた。三人の美少女に囲まれて――。
今がチャンスだと言わんばかりに、記憶を失ってしまった要に、あること無いこと吹き込もうとする少女たち。
「わたしとらぶらぶだったの!」「要様の心を射止める争奪戦を開始しよう!」「したくない? アタシとキス」
美人な親友に、自称妻、さらには愛人まで現れ……『秋山野要』って何者!?
モテモテすぎる『秋山野要』と、身体が同じなだけの、まるで別人格な自分。
突然、美少女たちの愛を一身に受けることになった要の選択とは――!?
記憶喪失ってこういうもん?
もちろん経験があるわけではないので、絶対におかしいとは言えないが、この主人公の記憶喪失の状態には強い違和感が。元々二重人格で、事故をきっかけに主人格が消えたか寝てるかしている、なら納得が……いや、それだとプライベートな記憶がゼロの説明がつかないか。
ハイスペックでしがらみの多い名家の御曹司の体に、凡人の主人公の魂が入ってしまった物語。というのが最もしっくりくる。
で、肝心の内容の方は、掴みは良かった。
個人を個人たらしめるものは『心』なのか『身体』なのか『記憶』なのか、あらすじの軽さとはかけ離れた真面目な命題に面食らいながらも、三人のヒロインの三つ巴の主張には興味を惹かれるものがあった。
ただ、その後はその問題が大きく取り上げられることはなく、凡人の少年がハイスペックお坊ちゃんの事情に無理して合わせている様子を、ハラハラしながら見守っているだけになるので、正直どこをどう楽しめばいいのか分からない。作者は何が書きたかったのだろう。やっぱりアイデンティティの問題なんだろうか。
結局、何がしたいのかよくわからない作品だった。