いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「妹さえいればいい。14」平坂読(ガガガ文庫)

「アンチも編集者も俺以外の売れっ子も全員爆発しろ!」作家としてブレイクし、愛する人と結婚し、父親となっても、人は(特に作家は)そう簡単に聖人君子のように生まれ変わったりはしない。羽島伊月は今日も荒ぶりながら小説を書く。そんな彼を生温かく見つめる妹の千尋も、報われない片想いにいい加減疲れていて――。伊月、千尋、京、春斗、那由多、アシュリー、海津、蚕、刹那、撫子……時を経て大きく変わったり変わらなかったりする主人公達が、それぞれに掴む未来とは!? 青春ラブコメ群像劇の到達点、堂々完結!!


これまで何度も我々を、笑わせ、呆れさせ、感動させてきてくれた若者たちの3年後を描く最終巻。
この銀髪美人妻は誰だ?
と思ってしまうくらい那由多が別人のような落ち着きぶり。ずっと「和子」表記なのもそこら辺を意識してなのだろう。違和感が凄いけど。はっちゃけた那由多が読めない寂しさと、辛い青春時代を送っていた子が最高の幸せ掴んだ奇跡に湧く感慨が混ざる何とも言えない感情は、長期連載の最終回でしか味わえない特別なもの。
あと京が敏腕(辣腕?)編集者になっていたのには驚いた。元々ハイスペックな娘だから一皮剥ければってところか。プライベートは相変わらずだったけどw
と、一部大きな変化があった人もいたが、基本的には仕事して、好いた好かれたですったもんだして、時々馬鹿やってと、彼ららしい日常が繰り広げられていた。まあ3年しか経ってないしね。でも、そのいつも通りの中で見つかる小さな変化の中に、確かな成長が感じられるのが良いところ。
それを言葉と態度で示してくれたのが、我らが主人公・伊月。
根拠の無い自信とふてぶてしさ「無駄に偉そう」が持ち味だった伊月が、今はちゃんと根拠も裏付けもある自信を付けて、それでもまだ大舞台では虚勢を張って「無駄に偉そう」に振る舞う。変わったものと変わらないものを体現する姿が、最後の台詞を含めてらしくて格好良かった。やっぱりお前が主人公だ。
また、ライトノベル作家を主人公にして業界のことを書いてきたこのシリーズらしく、二社の編集長の激論という形で、現在のラノベ業界への憂いを書いてくれたのが一ラノベファンとして嬉しい。いやもう、ほんとそれ。各出版社には易きに流れず気概を見せてほしい。
その後番外編を含めて最後まで馬鹿らしくて笑顔が絶えない、それでいて時々良いこと言って感動させてくる油断ならない奴ら。そんな彼らの物語を最後まで読めて幸せでした。


最後に、
栞ちゃんの将来が大変心配です。

「りゅうおうのおしごと!12」白鳥士郎(GA文庫)

奨励会三段リーグ
四段(プロ)になれる者は2人だけという苛酷な戦場。そこに史上初めて女性として参戦した銀子は、八一と交わした約束を胸に封じ、孤独な戦いを 続けていた。八一もまた、新たなタイトルを目指し最強の敵と対峙する。
そんな2人を複雑な思いで見守るあいと、動き出す天衣。そして立ちはだかる奨励会員(なかま)たち。
「プロになるなんて、そんな約束をすることはできない。けど――」
大切な人の夢を踏み砕くことでしか夢を叶えられない。それが将棋の世界で生きるということ。
銀子が、創多が、鏡洲が……純粋なる者たちの熱き死闘に幕が下りる奨励会編堂々のフィナーレ!


八一と銀子の急接近であいちゃんのヤンデレ化を予想していたら、意外なことに桂香さんがぶっ壊れた。
出葉亀おばちゃん→やさぐれ→修羅と、三段階でキャラ崩壊していく姿にくっそ笑った。桂香さんのキャラを破壊させ、自称悪役を破顔させる恋する乙女パワー恐るべし。表紙からして強すぎるもんなあ。この表紙だけでご飯三杯はいける。
それにしても、あいはどうした? 天衣はらしく反撃の一手を繰り出していたが、あいはこれといったアクションがなく存在感が希薄。このままでは二番手も危うい。
そんな決着間近の本妻レースの話はこれくらいにして、本題「奨励会三段リーグの決着」の話をしよう。
唯一の女性(銀子)、小学生、崖っぷちのベテラン勢、復帰の大ベテラン。多くの視点から、それぞれの地獄が語られるまさに修羅の国の物語だった。どれもこれも常人には経験できない本気度が伝わってくるエピソードで、胸が熱くなる。
その中で、自分がいい年とあって、どうしても肩入れし感情移入してしまうのはベテランたち。どんなにプレッシャーがかかっても「自分らしく」あり続けようとする鏡洲の姿。諦めの境地から自分の将棋人生を見つめ直す坂梨。汚い盤外戦術も厭わない辛香の本性。特に鏡洲のエピソードは彼を気遣う周りの反応に彼の誠実さと人の良さが出ていて、涙腺を刺激してくるものばかりで困る。
誰もが極限状態だからこそ本性が暴かれ、本心が出る。人間の内面が研ぎ澄まされた、恐ろしくでも最高の人間ドラマだった。今回も熱く、面白かった。
プロの方では帝位戦が始まったので、次からは本格的に主役の出番かな。ここ数巻、存在感が全然ないあいにもそろそろ出番がある?

2/20の雑談

◆花粉の季節がやってまいりました

目がー;; 鼻がーTT
てか早いよ! まだ冬だよ!



◆コンロ(グリル)が使い難いって話(またかよ

みりん干しとか、西京漬けとか、焼き魚で味がついてる奴って皮面が焦げやすいじゃないですか。
で、新しいグリルは両面焼き。 
表を満足のいく焼き加減にすると、裏は炭と化す。一応上下で火の強弱が変えられるので、下は最弱にしてみたが無駄。裏面真っ黒。気を付けて食べるか菜箸や包丁で削ぐしかないのか……
トレイに水が張れないと、やっぱり洗うのに苦労するし、、、もう元に戻したいよ(´;ω;`)ブワッ



●お届き物

妹さえいればいい。14」平坂読ガガガ文庫
俺、ツインテールになります。19」水沢夢ガガガ文庫
「氷川先生はオタク彼氏がほしい。 2時間目」篠宮夕(冨士見ファンタジア文庫
「俺がラブコメ彼女を絶対に奪い取るまで。」戸塚陸(冨士見ファンタジア文庫


ガガガ作品は両方フィナーレか。

「おいしいベランダ。 8番線ホームのベンチとサイダー」竹岡葉月(富士見L文庫)

大学生の栗坂まもりと、お隣に住む亜潟葉二は恋人から婚約者に! 葉二からのプロポーズを受け入れ、卒業後はまもりも神戸で暮らすと決めたのだ。
次は結婚挨拶にお互いの実家へ。さっそく栗坂家を訪ねて、年末には亜潟家へ向かう……って、行動が早いですね葉二さん!
同時に、まもりは二人の暮らしと目指す仕事の両方を叶えるため、関西で再び就職活動に挑むことに。
神戸のおいしい食材と料理で、気合いは充分――と思いきや、亜潟家での結婚挨拶にも、就活戦線にも異状が発生!?


挨拶回りと引っ越しとまもりの就活in関西で大忙しのシリーズ第8弾。
亜潟さんちの父母、おまけに兄も初登場。
亜潟家は思い切りとか自分で動かないと居られないところとか「ああ、これは葉二の家族だな」って感じだった。両親が教師で堅い家庭になりそうなのに、こんな愉快になるのはズルい。しかし、どこにいってもスルッと相手の懐に入り込んで、相手に気を使わせないまもりのコミュニケーション能力は尊敬する。そういえばこれで亜潟家コンプリート?
まあそんなことよりも、神戸編ですよ。
これは……就職氷河期の就活かな? 氷河期経験者には心に来るものがあって、疲弊していくまもりが見ていられない。仕事が忙しい中でも時々出てくる葉二の存在が、まもりだけでなく読者にもオアシス。
というか葉二さん、すっかりネタキャラ化してしまって。新しい会社では最早珍獣扱いじゃないですか。女性社員の「とっとと結婚しちまえ」の捨て台詞と葉二のピントのズレた返しにめっちゃ笑った。
他に神戸編でよかったのは初日、引っ越してきた日。
すき焼きで感じる東西の食文化が話の軸だったと思うのだけど、好きなのは神戸での初買い物。食品(ラインナップ・値段)の東西の差を知るためにスーパーを巡ったり、園芸店を見つけてはしゃいだり、所帯染みていてこの二人らしいお買い物風景がなんとも微笑ましい。あおりを受けた勇魚さん、お疲れ様でしたw
後半しんどかったけど、その前は楽しく面白かったし、まもりが頑張って笑顔で終われるラストにこぎつけてくれたしで、満足な一冊になった。
次回はまもり卒業編(予定)。これは新生活まで行ってくれそうな気配?

「天才王子の赤字国家再生術6 ~そうだ、売国しよう~」鳥羽徹(GA文庫)

「さて、どうしたもんかな」
青い海と白い雲、燦々と輝く南の太陽を鉄格子越しに眺めながら、ウェインは牢内で呟いた。
ソルジェスト王国との一戦に勝利し、不凍港の使用権を得たナトラ王国は、新たな交易相手を 開拓するため大陸南方に位置する海洋国家パトゥーラに目を付ける。ウェインは一気に話を まとめるため自ら交渉に赴くが、アクシデントの発生で、なぜか投獄される羽目に!?
パトゥーラ諸島における覇権の象徴・虹の王冠を巡って繰り広げられる骨肉の争い。嵐のような 戦火の中、天才王子が新たな傑物との出会いを果たす、弱小国家運営譚第六弾!


南の島だ! 水着だ! エプロンだ!なシリーズ第6弾。
また取り乱したり、寝顔見られたり、ウェインの言葉のストレートパンチをまともに食らったり。ニニムさん、最近ちょっと隙が多くなってません? 可愛いからいいけど。可愛いからいいけど。(大事なことなので2回言いました)
特に水着が強すぎた。白い肌に白い髪に黒いビキニに恥じらう姿、最強の組み合わせだ。てかニニムさん、おっぱい大きくなってません? もm(ry 比較対象がぺったんだったからだね、きっと。
今回もべらぼうに可愛かったニニム評はこれくらいにして、本題の方は
大陸の正反対、南の島国へ交易相手を探しに行ったら、跡目争いに巻き込まれる話。
今回はウェインが過去最も似合った位置にいた。そう牢屋……ではなく、影の支配者ポディション。自分は表に出ずに悪だくみに精を出すのが、ウェインには一番似合う。間違ってもラノベ主人公の正ポディションじゃないけどw
しかも手を貸す相手が、このシリーズでは大変珍しい野心も腹心もない素直で誠実な青年という操り甲斐のある人物で、計算高さとあくどさが際立っている。敵も味方もまとめて彼の掌で踊る様子は痛快の一言。まさにウェイン劇場だった。
これで北・中央・南と、大陸の東西を繋ぐ要所を全て押さえる形になったわけだ。これは東西の衝突が起こったら、場所がどこであっても巻き込まれるの確定か。やったね王子!w
珍しく想定外が少なく慌てた様子とそこからの逆転劇はなかったものの、その分ウェイン無双が楽しめて、今回も面白かった。
次は東で帝国の話になりそう。これはロワとの絡みが楽しみだ。今回もコメディ要員でちょくちょく出ていたけれど、やっぱり狐と狸は絡んでこそでしょう。