
亜季子の口から告げられた“新しい命”の話は、祝福と同じ重さで沙季の胸に不安を落とす。
「自分たちの生活を変えないでほしい」という亜季子の願いを受けて、悠太と沙季は各々の大学生活や仕事、恋人関係に没頭しようと試みる。
二人の日々は順調で、仕事では信用を獲得し、より大きなチャンスを掴もうとしていたが、沙季は不安から目をそむけるために無理にポジティブになろうとしているような、チグハグさをまとっていた。
そして訪れる誕生日デート。
沙季は予想外の行動に出る――。
妊娠、強みと弱点、クリスマス、お泊まり、秘密のタイムリミット。
“家族”の重みを抱いたまま、それでも前へ進む恋愛生活小説 第17弾。
大学1年の年末から年度が明け6月まで。
年度が変わる節目なので仕事や学業の忙しさと自分たちの生活の変化があり、そこに母・亜希子の妊娠による家族という枠組みでの生活の変化が加わって、多忙を極めた二人の半年間の様子が描かれるシリーズ17巻。
この巻にサブタイトルを付けるなら、「沙季ちゃん、盛大にテンパる」だろうか。
普段の学業にインターン先での新しい仕事(しかも苦手分野のホラー関係)とスキルアップのための勉強。これだけでもすでにキャパオーバーな気がするのに、そこに母の妊娠という大きな変化が加わってしまったらテンパるのも無理はない。沙季の性格上、どれかを手を抜くなんてことが出来ないから余計に。
どこかで爆発か墜落かしてしまうのではないかとハラハラしながら読んでいたが、最終的に綺麗に折れて綺麗に不時着出来て一安心。
母に弱音を吐き、彼氏であり兄である今一番近しい人を頼る。言葉にすればただそれだけの事の為に、大きく遠回りして頑張りすぎてしまう沙希の姿は相変わらず危うい。けれど、これで恋人としても家族としてもまた一つ距離が縮まった気がして、そこはとても嬉しいしホッとする。
それにテンパって暴走してくれたおかげで、読者としては思いがけない眼福をいただいてしまったし。ミニスカサンタありがとうございます。「気の迷い、してみたくて」は名言です。
一方、悠太の方は度々妊娠のことに思考が飛ぶことはあっても、異性の親でかつ自分は一人暮らし中と距離があったこともあるのか、過度に気負うことなく平常運転。両親や妹のフォローに回れるように、バイト先に事前に根回ししていく様子が頼もしかった。
今回は、悠太と沙季がそれぞれの恋心と二人の関係を考える段階から、家族という形を強く意識するきっかけになった物語だった。シリーズ当初は新米急増家族を壊さないように波風を絶たせないようにと一生懸命だったことを考えると、本当に家族になったんだと感慨も一入。
妹が生まれたことで二人の関係を黙ったままではいられなくなり、生活の変化もこれからが本番。次回も忙しそうだけど、今の悠太と沙季なら二人の関係も浅村家としての家族の在り方もいい着地点を見つけてくれるはず。