いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ひとつ屋根の下、亡兄の婚約者と恋をした。」柚本悠斗(GA文庫)

ひとつ屋根の下、亡兄の婚約者と恋をした。 (GA文庫)

高校生の七瀬稔は、唯一の肉親である兄を亡くし、兄の婚約者だった女性・美留街志穂と一つ屋根の下で暮らすことになった。
家族とも他人とも呼べない微妙な距離感の中、志穂の包み込むような優しさに触れ次第に悲しみが癒えていく稔。やがて稔の胸には絶対に抱いてはいけない「想い」が芽生えてしまうのだが、それは最愛の人を失った志穂もまた同じで……。
お互いに「代わり」ではなく、唯一無二の人になるために――これは、いつか二人の哀が愛に変わる物語。
兄の婚約者に恋した高校生と、婚約者の弟に愛した人の面影を重ねてしまう女性が、やがて幸せに至るまでの日々を綴った純愛物語。


唯一の肉親だった兄を病気で亡くした稔の下に現れたのは兄の婚約者の志穂だった。他人以上家族未満の一つ屋根の下ラブストーリー。
……ラブ? 恋、してましたか?
肉親が居なくなった主人公が、兄の代わりに家族として接してくれた年上の女性への感謝や申し訳なさ、共に生活をしていて沸く家族愛は感じても恋心は感じられなかった。家族愛でも愛は愛だとも言えなくもないが、二人のケースは悪くすると最愛の人を亡くした者同士の傷の舐め合い、共依存にも取れてしまう。
と、初めから煮え切らない感想になっている原因は主人公の落ち着きぶりだろう。
こういう好きになってはいけない相手を好きになる物語って、ままならない自分の感情に振り回されるのが醍醐味だと思うのだけど、主人公の稔には驚くほど感情の起伏がなかった。兄が亡くなったばかりで仕方がない面もあるかもしれないが。
それに好きになってはいけない理由が薄い。倫理的な問題としては主人公が高校生なことぐらいで、どちらも他に相手がいるわけでもなく、外に何か問題があるわけでもなく。なので、亡き兄(婚約者)を理由に一生懸命自分に言い訳している人達という印象で、もどかしさや痛々しさは感じても甘酸っぱさはほとんど感じなかった。
おかげで最も印象に残ったシーンがバイトの先輩の猫吸いっていうね(苦笑)。その先輩、口絵に居るから三角関係の相手かと思ったら、都合のいい便利なお助けキャラだったという。
読みたかったものと違ったというのもあるが、シチュエーションとキャラクター(の性格)が上手く噛み合ってない作品だった。この先ちゃんと“ラブ”ストーリーになれば噛み合ってくるのだろうか。

「新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 X」支倉凍砂(電撃文庫)

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙X (電撃文庫)

エシュタットを騒がせた“薄明の枢機卿”を騙る偽者を成敗し、身に余るふたつ名を背負う覚悟を決めたコル。傍らに並び立つ、人呼んで太陽の聖女・ミューリもどこか誇らしげな様子。
公会議に向けた準備も大詰めのところ、二人の下にエーブの部下で羊の化身・イレニアが投獄されたとの報せが届く。
しかも投獄先は山岳都市ウーバン、七人の選帝侯のうちの一人、傭兵王を名乗るデュラン選帝侯が治める要害の地。
姉と慕う彼女の窮地を救わんと鼻息荒いミューリは、早速イレニアを助けに行こうと計画を練るが、どうやらイレニアは選帝侯お抱えの天文学者を誘拐した罪に問われていて――。


ニセモノ騒動を機に表舞台に立つ覚悟が出来たコルとミューリは、公会議に向け仲間を増やすために傭兵王が治める地へ。
羊のイレニアに鳥のシャロン、鼠のヴァダンが活躍する獣率の高い回。そうすると必然的に出てくるのが人ならざる者の新天地の話と「月を狩る熊」の伝説。そういえばそんな話あったなーくらい認識だったものが、まさかここまで本筋に絡んでくるとは。
「月を狩る熊」は天文学的な話だったのか。人ならざる者たちの中での話だったので、もっと神話的なものだと思い込んでいた。言われてみれば納得で説得力がある。
そんなわけで、今回の話の中心は天文学。理科的な話ということで同世界観の『マグダラで眠れ』の雰囲気もありつつ、スケールの大きいロマンとワクワク感を強く感じる物語だった。表紙の背景もあってる。
その一方で、毎度驚きと関心を与えてくれる窮地からの逆転の一手が魅力の、狼と香辛料シリーズにしては珍しくオチに説得力がない。
コルの説得が、虎の威を借る狐ならぬ狼の威を借る子羊になってるのだが、教会の不正を正す“薄明の枢機卿”として異端の力の協力が得られることを見せるのどうなの?というのがまず疑問。単純のラノベの主人公としてカッコ悪いというのもある。
また、大昔の道の復活が逆転の決め手になっているのだが、随分昔に地形が変わってしまっているのに、どうやって道を元に戻すのかの方法論が一切論じられていない。○○を見つけたところで退かす方法がないじゃない。これで相手が納得するのは大いに疑問。
でも、このシリーズには珍しく完全解決というよりは次回に続くなニュアンスが強いので、こちらは次回何らかの答えが用意されているかもしれない。
ただ、次回は初の別行動になりそうで。。。心配だ。コルの身もそうだが、今回の天文学娘みたいな現〇妻的サブヒロインが増えないかが心配。ある一点ではミューリはホロより苦労してるわ(^^;

「私の心はおじさんである2」嶋野夕陽(PASH!ブックス)

私の心はおじさんである 2 (PASH!ブックス)

謎の赤子「ユーリ」を救出し【神聖国レジオン】に辿り着いたハルカ達。ダークエルフを破壊の神の使徒と思い込む学生達に絡まれてしまう。子供相手の模擬戦でハラハラしていたハルカだったが、なぜかしもべ(?)ができることに!
さらに、面倒な貴族のお坊ちゃんから依頼を受け、新たな街を目指す一行の目的地は世界中の強者がひしめく武闘祭!曲者揃いの大会で、ひとり闘いに挑むアルベルトは勝ち残れるのか!?
人間関係を諦めたおじさんが、新しい自分として異世界で心を成長させていく、歪だけど王道な冒険の物語第2弾!!


四十路で独身の冴えないおじさんが、ダークエルフとして異世界に転生する物語、第二巻。
一巻から間が空いたのでもう出ないのかと。無事に出て良かった。
ストーリーは護衛任務途中に寄った壊滅した村で赤子を保護した後。神聖国レジオン到着から隣のドットハルト公国での武闘祭の予選まで。おじさんが多くの出会いと別れを経験する旅のお話。
主人公のハルカは異世界転生ものらしく、外見は超絶美人で戦闘能力は極めて高いダークエルフなのだけど、読んでいるとそのことを頻繁に忘れる。なにせ中身が自己肯定感が薄い善良な小市民という実に日本人らしいメンタルの持ち主なので。
そんな彼(彼女?)が旅で出会いと別れ、平和な国ではありえない経験を繰り返しながら、仲間たちのこと、冒険者という職業、人の命のこと、一つ一つに悩んで飲み込んで考えて答えを出していく。その過程が丁寧に描かれるので、同じ小市民として共感できる場面が多い。
その悩み多き美女(おじさん)を引っ張ってくれる仲間たちが気のいい若者たちなのがまた良い。
実直な少年アルが叱咤し、元気少女のコリンが宥め、敏い少年モンタナが寄り添う。でもある時は逆にハルカが中身は年長者らしい気遣いを見せて若者たちの手助けをしたり。お互い助け合うというより、誰かが困っていたら助けるのが当たり前、四人でいるのがごく自然な空気が出ている。そんな気持ちのいい気の合う仲間たちとの旅が本当に楽しそう。
所謂なろう系は日頃の鬱憤を晴らす自己顕示欲の塊みたいな物語ばかりの中、外側のチートスペックを楽しい旅の煩わしい障害を取り除くためだけに贅沢に使って、純粋に旅と第二の人生を楽しんでいる感じがとても心地いい。
2巻も面白かった。次は師匠との出会いがメインかな? 

「魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?18」手島史詞(HJ文庫)

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 18 (HJ文庫 て 02-01-18)

迫りくる数々の危機や問題に対抗すべく行動を起こすザガン。そこに突如現れたのは、ザガンの旧知の仲にして敵の首魁でもある、マルコシアスその人だった。
「現〈魔王〉を招集する。お前にも、そこに来てほしい」
果ての地で開かれる、現〈魔王〉が勢揃いする集会。出向くことを決意したザガンは、せっかくの機会だからと仲間たちと共に道中で観光三昧!? 更にはバルバロスがザガンとネフィのために何やら企んでいるようで――。大人気ファンタジーブコメ第18巻!


表紙とラストがエンダーーーーーーーーーーーーーな18巻。
ストーリーとしてはザガンとマルコシアスによるまだフリーの魔王や魔王候補の引き入れ合戦と、現魔王が一堂に会する〈魔王〉会議開催のお知らせ。と、いったところだが、もう誰もそんなところ気にしてないよね←おい
誰も彼もがあっちでイチャイチャ、こっちでイチャイチャの通常営業。今回はずっと城にいたゴメリ婆さんが狂喜乱舞。本人は大して動いていないのに、それはもう目立っておられましたよ。
ホントあの婆さんどうなってんだ? 敵の総大将も出し抜く盗聴力にタジタジにする胆力。同志のマニュエラまで魔王より(押しが)強くなってるし、やっぱり作中最強だろう。もうさ、魔王の勧誘合戦がラブコメ渦に堕ちるか殺されるかの二択ってなんだよ。極端とかいうそういうレベルじゃない。ダメだこの世界。ゴメリ婆様に毒され過ぎたんた。。。
そんな精神的ゴメリ無双が繰り広げられている裏で画策されていたのが、前々巻ザガンの策略(裏切り?)によって熱愛が大々的に報じられた、バルバロスとシャスティルによるザガンとネフィへの仕返し大作戦。
というわけで、久々にメイン二人のイチャイチャ来た!待ってた。最近二人して影が薄かったから、そんなに長くはなかったけどその分濃いイチャイチャを読めてよかった。横槍を入れた新顔魔王もネフィのヤキモチを引き出すいい仕事をしてくれた。そういや指輪なんてあったね。作ってもらったのいつだっけ?もう覚えてないや(^^; 何はともあれその指輪もここぞの場面でいい仕事をしてくれた。満足。
次回は〈魔王〉会議……はどうでも良くて、興味は結婚式を完遂できるか。これに尽きる。

3月の読書メーター

読んだ本の数 :8
読んだページ数:2408

10冊を超える気配がない。。。


今月のベスト2

リコリス・リコイル Recovery days」アサウラ電撃文庫
リコリス・リコイル Recovery days (電撃文庫)


「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件9」佐伯さん(GA文庫
お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件9 (GA文庫)