いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる (1)」野村美月(ファミ通文庫)

吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる(1) (ファミ通文庫)
吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる(1) (ファミ通文庫)

バスケの強豪校で練習に打ち込んでいた詩也。けれどある日、彼は"人ではないもの"になってしまった……。人を遥かに超える身体能力を得たため、バスケも続けられず転校したその先で、詩也はマリア様を思わせる綺麗な先輩に出会い、告げられる。「わたしと、おつきあいしてください」――つれていかれた先は演劇部。そこで詩也は、何と先輩のパートナーとしてドラキュラを演じることになってしまい……!? ドラマティック青春ノベル、ここに開幕!!

野村美月先生の新シリーズは吸血鬼で学園青春ストーリー。



このヒロインはいけない。
「魔性の聖女」のあだ名に相応しい天然さ、お姉さん的なお節介、テンションは基本高め、押しが強いのに急に弱気になる。おや、遠子先輩の再来かな?と表紙を見返したら……大きい!? おかしい。こんなことは許されない。その弱点を克服してしまったら最強じゃないか。しかも、人気が出そうな ななせ−帆夏の系譜に入りそうな妹・美歌の登場が遅いこともあってアドバンテージも大きい。
というヒロイン・綾音の無双ぶりにニヤニヤしながらも、話の序盤は彼女につられたかのように地の文もハイテンションで押しが強くて、ちょっと苦手だなと思いながら読んでいた。それが主人公・詩也の問題が明るみになって、彼が悩みシリアスになってくると、地の文が落ち着いていい塩梅に。やっぱり切ない系・シリアスは上手いなあ。
その後は、感情移入もし易くなっったのか、一気に引き込まれて気付いたら終わっていた。特に劇本場でのメイン二人の心理描写と躍動感は圧巻。
初めこそ少し面食らったが、野村作品過去最強かもしれないヒロインと、野村先生らしい豊かな感情表現が読めて面白かった。続きも楽しみ。