ある大陸の片隅。そこでは、七つの主要都市が先王の隠し子と呼ばれる姫君を擁立し、国家統一を目指して割拠していた。その中の一人、七宮カセンの姫に選ばれたのは九歳の孤児カラスミだった。彼女を担ぎ出したのは、武人のテン・フオウ将軍とその軍師トエル・タウ。二人とも、桁違いの嘘つきで素性も知れないが、「三人で天下を取りにいこう」と楽しそうにそう話す二人の側にいられることで、カラスミは幸せだった。しかし、彼女が十二歳になた時、隣の都市ツヅミがカセンへ侵略を始める……。
これは素晴らしいキャラ小説。
国取りの物語でありながら戦争や政治的駆け引きを必要最低限に抑えて、空澄自身の成長と空澄から見たトエとテンやその他の空澄を取り巻く人々を描くことに重点を置いた作品。こうした国取りものでは戦略知略を重点を置く作品が多い中、これだけ人物を描くことにこだわった作品は珍しいし、全編純粋無垢な空澄の一人称なので大人の思惑は見え隠れするだけで、どす黒く思い話にはならずに非常に綺麗な話になっているのがいい。なかでも空澄と無愛想な少年ヒカゲの微笑ましいやり取りが好き。いいなぁ、こういうこそばゆい感じ。
