いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「思い出のとき修理します」谷瑞恵(集英社文庫)

思い出のとき修理します (集英社文庫)
思い出のとき修理します (集英社文庫)

仕事にも恋にも疲れ、都会を離れた美容師の明里。引っ越し先の、子供の頃に少しだけ過ごした思い出の商店街で奇妙なプレートを飾った店を見つける。実は時計屋だったそこのを営む青年と知り合い、商店街で起こるちょっぴり不思議な事件に巻き込まれるうち、彼に惹かれていくが、明里はある秘密を抱えていて……。
どこか懐かしい商店街が舞台の、心を癒やす連作短編集。


年に1,2冊、声話出して笑ってしまったり大きく感動したわけではないのに「これは時々読み返しそうだな」と思う本に出くわす。
まあ、普段から本ばかり読んでいるのでシリーズもの新刊が出る直前に前巻を読み返すこともあれば、気分的に幸せ気分が欲しい時はベタ甘なものを、泣きたい時には切ない話を選んで読み返したりしているのだけど、それとはちょっと違う「なんとなく」とか「ふと」読み返したくなる本。それがこの本。
基本的には少し不思議付きの優しく温かな話が連なる連作短編なのだけど、舞台であるシャッター商店街の寂れた雰囲気と、主人公・明里と時計屋さんの持つ心の傷で、優しいだけ楽しいだけではなく痛みや苦さもある。それでも一話読み終わる毎に、何かを少しだけ許されたような少しだけ前を向ける気分にさせてくれる。特に笑顔と甘さを残していくラストシーンは読後感が最高で、この小さな幸せにもっと浸っていたくなる。
続きはあるのかな。二人の今後を見たいので続いてほしい様な、心情的にも思い浮かぶ情景的にも綺麗な終わり方なのでこのままでもいいような複雑な気分。