いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「サリー&マグナム OF THE GENUS ASPHALT」てり(講談社BOX)

サリー&マグナム OF THE GENUS ASPHALT (講談社BOX)
サリー&マグナム OF THE GENUS ASPHALT (講談社BOX)

実体を持たずにこの世に生まれた不具合――バグ。
生まれた時から俺にはそいつらが見えた。「見える」人間は珍しいらしく、奴らはなにかと俺に構う。
ある夜、アスファルトからドゥルンと現れたサリー。オネエ口調のやたら馴れ馴れしいそいつは、俺に助けを求める声が聞こえるのだと言いだして――。


助けを呼ぶ声はやがて、バグたちがお互いを潰し合う「大逆発情期」の訪れをマグナムに知らしめる。大切な仲間を守るため、マグナムは相棒・サリーと愛車のカブで奔走する!

幽霊や妖怪や神など実態を持たないものを総じて「バグ」と呼び、彼らを知覚出来る主人公マグナムと彼の周りに集まるバグたちの物語を基本一話一事件で全七話で綴られる。



プロローグではハードボイルド風味なのかと思ったら、煙草の匂いはなくテンションは総じて高め。これはERとか昭和の刑事ドラマとかの系統だね。それなりに知名度があるであろうライトノベルで例えると、『ほうかご百物語』みたいなことを『コップクラフト』ようにアメリカのドラマ風に仕上げた作品。
本書の最大の特長はほとばしるおっさん臭。ヘタレな少年主人公ばかりで無闇に萌えに走る今のライトノベル界では、おっさんはステータスだ!希少価値だ!……いや、ただ自分がおっさんキャラが好きなだけですがねw
でも、主人公マグナムはハートが熱く情も厚くておっさんを抜きにしても魅力的。戦いになるとすぐテンパるのが玉に瑕だが、誰かがピンチになった時の底力はピカイチ。また、オネエな相棒のサリーがめっぽう強いので、どの戦いも最終的には爽快感が味わえる。
そんな二人の下に集まるバグたちも情の厚い奴らばかり。彼らが総出演する第七話は、ビルを舞台にした所謂「ここは俺に任せて先に行け!」な王道展開でこれ以上ない盛り上がりを見せる。
難点は展開が速すぎることか。スピーディーでテンポよく読める反面、各話の間で話が進んでいたり、話の冒頭や思い出話でサラッと話した事実も後半に重要な意味を持っていたりして、全話視れずに飛ばし飛ばしになってしまったドラマシリーズといった印象を受ける。ページ数が少なめなのでもう少し肉付けしてくれても良かったのに。
気持ちいい奴らが気持ちよく暴れまわるスカッとできる作品。面白かった。



エスパルスの文字だけでテンション上がるのはきっと私だけなので特筆しないことにしておく(←書いてるやん