いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「翼の帰る処4 ―時の階梯― 上」妹尾ゆふ子(幻冬舎コミックス)

翼の帰る処 4 ―時の階梯― 上
翼の帰る処 4 ―時の階梯― 上

青鉄の鉱床発見の成果により、論功行賞を授与されることになったヤエトは皇都に赴き、皇帝から「隠居」を告げられる。かねてより、強い隠居願望を持っていたヤエトは静かに暮らせるかと思いきや、政務の引き継ぎや皇女との関係で慌ただしい日々を送っていた。そんな中、エイギルとミアーシャの息子のキーナンと養子縁組をし、《黒狼公》家を継がせることに。政務は離れ「魔界の蓋」がある場所の探索に本腰を入れるため砂漠へ旅立つが、「復縁」を迫られた皇妹殿下とヤエトは過ごすことを余儀なくされ……。


皇帝から唐突に告げられた報酬「隠居」。ついに来た!夢の隠居生活!! 
……になるはずはなく、ご隠居様になってもやることは一切変わらない。いや立場のことを考えると悪化したような?
そもそも今回は大事の後なので、表面上は平穏で水面下ではあちこちで火種が燻っている状態で、ヤエトの仕事内容と性格からこういう時が一番忙しい。その上、新たに父親役まで追加。それでなくとも皇女の保護者で忙しいっていうのに、この人はどこまで背負い込むつもりなのか。
そんな感じで倒れる暇もないほど多忙だったヤエトには悪いけど、この状態が一番面白い。
地の文の“――”に続くヤエトの本心とぼやきこそがこのシリーズの真骨頂。動き回り喋る機会が多くなって、内心のぼやきが大増量で読んでいて微苦笑が抑えられない。
今回は寝込みは少なかったけど、下巻は上巻の疲れも出て半分くらいは伏せってるんじゃないか? ファンタジーなのに中間管理職の苦労譚の色がまた濃くなっちゃって。まったく最高ですね。
少々残念だったのは三人(ヤ、ル、ミ)のシーンがなかったことか。まあ、それぞれでも十分に楽しめるのだけど。
ルーギンとの会話は、彼と話している時が一番ヤエトの力が抜けているのがよく分かる。ぶつぶつ文句言いながらも気を許しているのが分かる言葉使いにニンマリ。
一方、皇女の方はまさかのプチご乱心。長いこと離れ離れなってかたらね。気持ちが溢れちゃったんだね。仕方ないね。可愛いから許す。対するヤエトの反応は……見本か、見本なら仕方nなわけがない。ちゃんと責任とれよ!(ぇ
次は政局よりもファンタジー色が強くなりそうな終わり方。でも世界の行く末よりも皇女の反応の方が気になってしまうのは、私だけではないはず。