いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「落第教師 和久井祥子の卒業試験」桜井美奈(メディアワークス文庫)

落第教師 和久井祥子の卒業試験 (メディアワークス文庫)
落第教師 和久井祥子の卒業試験 (メディアワークス文庫)

「――逃げなさい。そして自分で居場所を見つけて!」
教師として母校に赴任した祥子は、モンスターペアレントの標的にされ、気の休まらない日々を過ごしていた。それでも生徒を助けようと、解決の方法を探るのだが……。
そんな祥子も、私生活では二十代のふつうの女子。人も羨む男性から告白されるものの、旧友である晴彦との関係が変わり始めて……。
恋に仕事に悩む祥子が行き着く場所は、時間を経ても変わらない学校の片隅にある花壇だった。移りゆく季節と共に、助けられる側から、助ける側へと立場を変えて、落第教師・和久井祥子が突き進む。

デビュー作「きじかくしの庭」の三年目の主役だった和久井祥子のアフターストーリー



前作もそうだったけど、「居場所」にこだわる作家さんだなと。
落ち着ける場所、気分をリセットできる場所、悪い言い方をすると逃げ場所。でもこれがないと人間パンクしてしまうよね。
これは、昔居場所がなかった少女が先生になって、今居場所がない少年を救おうとする話。
……だったんだけど、モンスターペアレントが強烈でそちらの印象ばかりが残ってしまった。
こうやって子供の話も聞かず単独で被害妄想に陥って喚き散らすタイプもいるんだなあ。お話の中と言えども結構な数の参考文献が載っていたし、それなりに真実味があった。モンペというとDQNな子の嘘を真に受ける馬鹿親か、もしくは主にお金関係に難癖付けてくるってイメージがあったんだが。まあ、この母親の場合は旦那の問題もあって依存先は子供、ストレスの発散先は学校へのクレーム電話って感じだったが。これは多分精神科に連れて行っても問題ないレベル。
そんな母親を相手に、夫は逃げ子は諦めた状態でも最後まで頑張り通して一人の生徒を救った功績は、家庭環境が複雑な祥子だからこそだろう。この諦めない根性は、停学の危機から救いだして居場所を与えてくれた恩師のおかげかな。やっぱり田路先生っていい先生だわ。やさぐれ少女・祥子の成長を感じたくて読んだので、最後にやっとそれが感じられたのが良かった。
そういえばタイトル・落第教師の面影はどこにもなかった。前作は落第生徒でもこの本では初めから立派な先生だった。