いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「GOSICK RED」桜庭一樹(角川文庫)

GOSICK RED (単行本)
GOSICK RED (単行本)

時は1930年代初頭、ニューヨーク。超頭脳“知恵の泉”を持つ少女ヴィクトリカは探偵事務所を構え、久城一弥は新聞社で働いている。街は好景気に沸き、禁酒法下の退廃が人々を闇へと誘う。ある日、闇社会からの依頼人ヴィクトリカを訪れ、奇怪な連続殺人の解決を依頼する。一方、一弥は、「心の科学で人々の精神的外傷を癒やす」という精神分析医のもとに取材に向かっていた。やがてすべての謎は一つに繋がり、恐るべき陰謀が姿を現す――。


懐かしい。その一言に尽きる。
シリーズ最終巻が出たのが2011年の夏。しかし、その時の二人は離れ離れ。その前も大きな陰謀に巻き込まれていて別れの気配があったし、富士ミスの休止や作者の一般文芸進出など色々あって刊行が止まっていたりもしたので、こんな落ち着いた状態で二人のやり取りを読むのはいったい何年ぶりになるんだろう。
一弥がヴィクトリカの怠惰を叱るところから始まり、偉そうなヴィクトリカに怒りながらも世話を焼く一弥を経て、ヴィクトリカの推理へと至る。二人のいつものやり取りが大人になっても結婚していてもちっとも変っていなくて、安堵と微笑ましさで二重に頬が緩んでしまった。そう結婚していても。「大事な妻」という記述を見たときの喜びは忘れられない。ただ、ここ以外にそれらしい描写がないんだよね。もっとイチャイチャしてもいいのよ。
内容は、ニューヨークで裏世界の陰謀に巻き込まれていくストーリーで、小さな謎も大きな事件もヴィクトリカが有無を言わさず解いていくので、探偵ミステリと言うよりは冒険活劇といった感じ。話の規模が一気に膨んで読書を驚かせて楽しませるエンタメ小説の顔も旧シリーズと変わらない。
全力で「GOSICKが帰ったきた」と感じさせてくれる物語。楽しかった。


是非とも武田日向先生の挿絵入りで文庫化して欲しいものだが、2011年から音沙汰がないんだよなあ……。