いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「氷結鏡界のエデン13 楽園現奏―エデン・コード―」細音啓(富士見ファンタジア文庫)

氷結鏡界のエデン13 楽園現奏―エデン・コード― (富士見ファンタジア文庫)
氷結鏡界のエデン13 楽園現奏―エデン・コード― (富士見ファンタジア文庫)

「第七真音律は、すべての魔笛を消滅させる鍵。だけど……」
穢歌の庭で向き合う二人の少女。ひとりは皇姫の後継者として、祈りを詠う使命を帯びて。ひとりは愛する人を救ため、世界を敵に回して。同じ想いを抱いたはずの鑑を介した実像と虚像。そして、第七真音律を帯びた少年、シェルティスは穢歌の庭を進む。最愛の人を守るという想いを叶えるため――
浮遊大陸で希望を胸に抗う者たち、穢歌の庭より悲哀の遠吠えをあげる獣たち、その戦い。魔笛を宿した少年、沁力を持つ少女、ふれ合うことのできないふたりの約束。すべての願いと戦い、決意と希望が交錯する、重層世界ファンタジー、終曲!


はー・・・終わった。
触れ合えなかった二人が手と手を取り合って歩き出す。予想どおり、いや望んだとおりのラストの感動をしばし噛みしめる。


でも、改めて思い起こすと隣にいるのがこちらのユミィという事が複雑な気分にさせる。
前の巻もこの最終巻も、イグニド(ユミエル)のシェルティスへの想いの強さを強調される内容になっているものだから、どうしてもユミエルの方に感情移入してしまう。
そのため、ユミィも悲しい想いも苦労もしてきたことは分かっているけど、ユミエルと比べてしまうと我が儘を通しただけという印象が強い。ユミエルも少しだけ報われるエピローグにはなってはいるのだけど、より辛い思いをしてきた方が一番根本的なところで報われていないラストシーンには、ちょっとだけ物悲しさと納得いかないものが入り混じっていた。
何はともあれ、誰も犠牲になることなく、みんなにそれぞれの未来が用意されている大団円には満足。『黄昏色の詠使い』に続き、透き通った綺麗な物語をありがとうございました。