いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「メンズフロアの王様」菱田愛日(メディアワークス文庫)

メンズフロアの王様 (メディアワークス文庫)
メンズフロアの王様 (メディアワークス文庫)

何社も落ちてようやく決まった小梅の就職先は、高級デパートの男性向けアパレル店。
店長の翔は容姿端麗にして接客態度も超一流、「メンズフロアの王様」と呼ばれる人物だった。しかし翔の本性は、性格最悪、超ドS。ちょいダサな小梅を、自分の店で働かせたくないらしい。
負けず嫌いな小梅は翔に自分を認めさせるべく、販売員の勉強を始めるが――。
クールな副店長松本、天真爛漫アルバイトの守など、個性豊かな店員たちに見守られ、小梅の社会人生活が始まる。
煌びやかなメンズフロアに放り込まれた地味系女子の奮闘を描く、お仕事ラブコメ


三人のタイプの違うイケメンが揃った職場に地味子な主人公が配属される、スーツブランドの売り場を舞台にした物語。
少女漫画、もしくは乙女ゲーにありがちなベタなシチュエーションに、それを意識したような表紙。これは地味主人公のシンデレラストーリーが繰り広げられ……ませんでした! 一切甘くない。むしろ泥臭いと感じるほど。
というわけで本作は、ラブ無し・コメディ微量・お仕事いっぱいの新社会人の成長譚。
主人公・小梅の人柄が良かった。
就活で連戦連敗。何とか滑り込んだ会社は吸収合併され何故か望まぬアパレル業界にと、自信もなければ運もない小梅は、普段は失敗と悩みの連続。それが社会人でも学生でも一度は経験したことのある失敗や悩みばかりで共感しやすい。
でもその反面、辞めないと一度決めたらそれを貫き通す根性と、自分が間違っていると思ったことに対して、相手が誰であろうと後先考えずにズバッと物申してしまう江戸っ子気質も持ち合わせている。特に後者、これが思いの外気持ちいい。普段、顔で笑って心で悪態ついている現代人の代弁をしてくれているからかな。
お仕事の話も、仕事に対する心構えなどの一般的なものからアパレル業界特有のものまで、ためになるものあり薀蓄ありで面白く、ストーリーも綺麗に締まっていて申し分なし。
あらすじや表紙からは全くの予想外の方向だったけど、面白かった。