いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?」枯野瑛(スニーカー文庫)

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (角川スニーカー文庫)
終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (角川スニーカー文庫)

《人間》は規格外の《獣》に蹂躙され、滅びた。たったひとり、数百年の眠りから覚めた青年ヴィレムを除いて。《人間》に代わり《獣》を倒しうるのは、《聖剣》と、それを扱う妖精兵のみ。戦いののち、《聖剣》は再利用されるが、力を使い果たした妖精兵たちは死んでゆく。「せめて、消えたくないじゃない。誰かに覚えててほしいじゃない。つながっててほしいじゃない」死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の、儚くも輝ける日々。

枯野さん、突然スニーカーで出したりしないで下さいよ。見逃してしまいますから。




世界を滅亡させないために戦う妖精兵と、彼女たちを管理することになった青年の物語。
なんという絶妙なバランス。
人間が滅亡している話も、少女が兵器になる話も、ライトノベルとしてはさほど珍しいものではないが、ここまで先が見えないのは珍しい。
表紙の表情や帯の台詞からスタートして、妖精兵と呼ばれる少女たちの運命が語られるところまでは、死の色が濃い涙の物語になるんだろうという流れだった。それが主人公の知識が死にゆくはずの彼女たちの生き残る可能性を生む。が、その後に死亡フラグはしっかり立てていく。
結局、彼の存在は生への光になるのか、精神的な救いにしかならないのか、どちらにも傾きそうな伏線の張り方で続きが非常に気になる。
戦う少女たちの話のなのに戦闘が無く、心の触れ合いメインに書かれた作品で、以前と変わらない女キャラクターの魅せ方の上手さと、退廃的な雰囲気がマッチしていてかなり好み。
ただ、派手さは皆無なのでライトノベルを主に読む層にはあまり受けそうにないのが心配。最近のスニーカーは二巻が打ち切りラインなのね。早いよ、怖いよ。