いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ようするに、怪異ではない」皆藤黒助(角川文庫)

ようするに、怪異ではない。 (角川文庫)
ようするに、怪異ではない。 (角川文庫)

「要するに、これは怪異の仕業ではありません」――。
高校に入学した皆人が出会ったハル先輩は、筋金入りの妖怪マニア。彼女は皆人のもとに「妖怪がらみの事件」とやらを次々に持ち込んでくる。部室に出ると噂の幽霊の正体、天窓から覗くアフロ男、監視カメラに映らない万引き犯……。とある過去から妖怪を嫌う皆人は、ハル先輩に振り回されながらも謎を解き明かしていく。爽やかでほろ苦い、新たな青春ミステリの決定版!

タイトルとあらすじに惹かれて買ってきたら「スマホ小説大賞2014 角川文庫賞」作品だったらしい。
なんだかケータイ小説みたいでイメージ悪いなw あ、だから帯に大々的に書いてないのか。



学園日常ミステリのテンプレ通りの作品。
この手の作品はすでに型が決まっているのでキャラクターや謎解き、学園ものらしい青春、もしくは他の肉付けで特色を出していくのだけど、同種の作品がここ数年で完全に飽和状態にあるので、何をやってもオリジナリティが出しにくいのが辛いところ。
さて、本作の一番の魅力は妖怪大好きヒロイン・ハル先輩。
周りを振り回しながらも嫌な気がしない天真爛漫さ、それでいて我を通すだけでなく人の意見はちゃんと聞いたり、友達や仲間を心から信頼する素直さが好ましい。
また、トラウマを抱えてどうしても人との距離を取ってしまう主人公・皆人の壁を、ハル先輩が溶かしていく様子や、彼が笑顔になるのラストシーンは、甘酸っぱさを含めて思いっきり青春を感じられる。
しかし、ハル先輩以外のキャラクターがあまり好きになれなかったのが痛い。事件の犯人でなくても他人の嫌がることを割と平気でしてしまう人物が多く、眉をひそめる場面がちらほら。作者とイタズラの許容ラインが大きくズレていそうだと感じた。
(個人的に)期待の妖怪要素は、ハル先輩の妖怪薀蓄はコアで面白かったが数が少なく、「鬼太郎のまち」境港市を舞台にしているのに、それを生かせていないのが残念。
あと、謎解きはかなり単純。ミステリとして楽しめる要素はほぼ無い。
そんなわけで、キャラクター△、謎解き×、青春○、妖怪△で総合で普通。