いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「彼女が捕手になった理由」明日崎幸(一迅社文庫)

彼女が捕手になった理由 (一迅社文庫)
彼女が捕手になった理由 (一迅社文庫)

左利きのショート―本摩敬一が所属する中学野球チーム『白倉柏シニア』。剛速球でノーコンのピッチャー。守備範囲は広いけど弱肩のセンター。強打だけどリードの下手なキャッチャー。
ちぐはぐで万年二回戦どまりのチームに突然入部してきたのは、名門チームのキャッチャーで―しかも女の子の、梶原沙月だった。
「全国目指さないで、どうするの?」
監督権をまかせられた彼女は、容赦なく守備位置をコンバート。キャッチャーをファーストへ、ピッチャーをセンターへ、そして敬一はなぜかピッチャーに!?衝突と反発を招きながらも、沙月の采配と情熱がチームに奇跡を起こす――
超爽快・青春野球小説!


久々にファンタジー色のない野球ラノベに出会ったのでワクワクしながら読み始めたのだけど……
野球の知識が中途半端でツッコミどころ多すぎぃ!
でもまあ、野球部分をキャラや試合内容以外も全てフィクションとして読めば…………うん、無理。間違った知識を練習中でも試合中でも、ヒロインの沙月ちゃんに堂々と語らせてしまっているから、段々と居た堪れない気分になってくるんだ。左投手だからスクリューとか言い出しちゃうパワプロ知識丸出しのレベルで語ってしまったのが悪い。これ、なんJ民に読ませたらフルボッコにされるぞ(^^;
間違いに逐一ツッコミを入れるとこのブログ過去最長の感想(ダメだし)になってしまうので、一番気になったナックルボールのことにツッコむと、
説明されているような敬一のフォームでナックルボールを投げるのは物理学的に不可能。仮にそこをフィクションだからで片付けても、本当にナックルボールになっているのならショートの敬一は送球エラーを繰り返しているはずだし、沙月がミットを動かさずに捕球するのもおかしい。バッターは打てないのに捕球は難なく出来る魔球は魔球じゃなくてただのご都合主義だ。設定が破綻している。それに日米でプロにナックルボーラーがいないってどういうことよ。流石にディッキーも知らないのにMLBを語っちゃいかんでしょ。ちなみに日本にも持ち球にしてなくても投げれる現役投手はいるからね。ヤマヤスとか岩瀬とか。ああ、これも普段使わない変化球は省かれるパワプロの弊害か。…………すみません。熱くなりました。
肝心の物語は、強豪チームを追い出された捕手がそこそこレベルのチームに入り、選手の特性を見抜いて生かして下剋上を果たす王道ストーリーの青春もの。その捕手・沙月が女の子なのが普通と違う点なのだけど、それがほとんど生かされないまま話が進むのでよくある話の域を出ない。だからこそ粗ばかりが目立つわけだが。
それでも最後の試合の終盤からやっと沙月が“ヒロイン”をやり出してくれるので、最後の最後だけ楽しく読めたのが救い。
野球好きで野球ラノベを読みたい人には薦められない。野球に詳しくなくて、女子が男子に交じってスポーツをやっている姿が好きだという人だけどうぞ。その際、野球知識は真に受けないように。