いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ぶたぶたの花束」矢崎存美(徳間文庫)

ぶたぶたの花束 (徳間文庫 や 36-6)
ぶたぶたの花束 (徳間文庫 や 36-6)

最近、アイドルの玲美はストーカーにつきまとわれていた。そこで事務所の社長が連れてきたボディガードは、なんとバレーボールくらいの大きさをした動くピンク色のぶたのぬいぐるみ!? ライブも一緒についてきてくれるし、家で悩みとかも聞いてくれて、怖い思いが和らいできたとき……。心が弱ったとき、山崎ぶたぶた(♂)と出会った人々に起こる奇蹟を描くハート・ウォーミング・ノベル。

アイドルのストーカー被害に始まり、児童虐待に、長年連れ添った彼氏に裏切られた女性。いつになく話が重い。
でも、これこそがぶたぶたさんが持つ素の癒し能力が存分に発揮される舞台なのかもしれない。こんなに後味悪そうなテーマばかりなのに、読後感は全然悪くないのは、ぶたぶたさんだからこそなせる技。
一方でタイトル通りに花屋さんをやっていた話は(ちなみに花屋さん2話、その他3話)、いつも通りのちょっと疲れた人がぶたぶたさんに会って癒やされるほっこりする話。やっぱりなんだかんだでこっちの方が好きだな。
特に銀婚式夫婦の話「チョコレートの花束」が良かった。不満とも不安とも言えないちょっとした引っ掛かりという感覚に共感し、その歳になっても新しい発見出来る二人に自然と顔がほころぶ。
変わらぬぶたぶたテイストと、緊張感からの大きな安堵といういつもとはちょっと違う流れの話。両方楽しめる一冊だった。