いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「死にたがりビバップ -Take The Curry Train !-」うさぎやすぽん(角川スニーカー文庫)

死にたがりビバップ -Take The Curry Train !- (角川スニーカー文庫)
死にたがりビバップ -Take The Curry Train !- (角川スニーカー文庫)

第22回スニーカー大賞〈特別賞〉受賞作!
「生きる意味がない」と嘆く完璧主義者は、納得いく死に場所を求め〈寝台特急ボンディ〉に乗車する。それは余生を謳歌する、穏やかな旅になる――はずだった。酔いどれの旧友、メイドに扮した麻薬捜査官、ギャングの可憐な跡取り娘、爆弾をまとう元恋人……旅は道連れ、ギャングも乗り込み銃弾飛び交うバカ騒ぎへと突入する!! 不器用な自殺志願者たちの奏でる、熱烈な群像劇を召し上がれ。

明るくて騒がしい死にたがり達の死ぬ死ぬ詐欺群像カレーコメディ。
地名も人名も全てカタカナ名(そのほとんどが香辛料だけど)の欧米風の世界観で、列車内というある種の閉鎖空間での群像劇でありながら、その中身が日本のぼっち学生の日常と愚痴を煮詰めたような語りが延々と続くという、終始笑えばいいのか呆れればいいのか悩む作品。
その頭でっかちで滑稽な語り口にモリミー節を感じさせるところもあるが、あそこまで濃く煮詰まってはいないのと、群像劇なのに一本調子なのが残念なところ。メインの語り部であるメリック、ジン、ナツの三名が、男女の差はあれ基本似たようなメンタルの持ち主で、視点が変わっても話の雰囲気や調子に変化がない。せめてクミンやカルダ目線があれば……書けなかったんだろうなあ。
あと、この作品を語る上でどうしても外せないのがカレー。
全ての問題はカレーが解決してくれる。何を言っているのか分からないが、実際にそうだからそうとしか言えない。まあなんだっていいじゃないか。こんなに美味しそうに描写されたらどうしたってカレーが喰いたくなるってもんだ。
最後まで読んでも「なんだこりゃ」「なんのこっちゃ」という感想しか出てこないが、とりあえず作者の深いカレー愛はひしひしと感じた。近々晩飯をカレーにしようと思う。