いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「あのねこのまちあのねこのまち 壱」紫野一歩(講談社ラノベ文庫)

あのねこのまちあのねこのまち 壱 (講談社ラノベ文庫)
あのねこのまちあのねこのまち 壱 (講談社ラノベ文庫)

駅では電車が素通りし、地図にあるのにたどり着けない町、夕霧町。びっしりと生えた大根が道を塞ぎ、地蔵が抜け道を教えてくれるこの町には、一匹の猫がいた――。ポルターガイスト現象に悩む高校生・墨染幸一は、たまたま夕霧駅に降り立ち、相談屋を営む少女・フミと出会う。彼女の店にはいつもフシギな相談が。影が消えたり、角が生えたり……。「私は何でも解決出来るからね」と笑うフミに振り回され、幸一もおかしな町を駆け回る! ヒトもアヤカシも恋も呪いもハッピーエンドにするために!! しかし、やがて幸一は知る。のんきに茶をすする彼女の、あくびに隠れた哀しい祈りを――。とっても愉快でちょっぴり切ない、脱力系お悩み解決ファンタジー


人間界に店を構える猫又の相談屋が人間を相手にあやかし関連の悩み事を解決していく物語。
古めかしくて寂れていて少しだけ神秘的でもある夕霧町の空気に、惚けた性格でゆったりまったりな店主の猫又フミ。雑多な物で溢れていて秘密基地みたいなフミの店の空猫屋に、その上をいくワクワク感があるまほろば商店街。それら色々な要素が噛み合って出来た作品の雰囲気がとても良い。
また、美少女のひょっとこに超絶ネガティブ美少女の小豆洗い、人情味溢れる天狗に男気溢れる鬼など、パブリックイメージから少しズレた妖怪たちのキャラクター設定もなかなか面白い。
しかし、ただ一点。主人公・幸一だけが好きになれなかった。
とにかくせっかちで常にイライラしているのが大きなマイナス点。何故この物語にこの主人公を配置した? 脱力系お悩み解決ファンタジーを名乗るなら、のんびりした雰囲気を自ら壊しにいっちゃダメでしょ。あらすじは担当編集が書いてるんだろうけど。
見ていると落ち着く牧歌的な素敵な絵を眺めていたら、一滴墨が落ちていて台無しにされた気分。