いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「賭博師は祈らない (2)」周藤蓮(電撃文庫)

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)
賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

奴隷の少女リーラの救出劇から一週間。賭場を負かし一人の女を守った代償はしかし大きかった。「負けない、勝たない」をモットーにしていたラザルスは賭場に出向くこともできなくなり、帝都を旅立つことを決める。それは、少しずつ心を開き始めたリーラを連れての道楽旅行になるはずだったが……。
「ねえ、ラザルス。私と結婚しましょ?」
道中立ち寄った村でラザルスを待ち受けていたのは、さる事情で窮地にある地主の娘エディスからの突然の求婚だった。一方、リーラは二人のやりとりを覗いてしまい、自分はラザルスにとって不要なのではないかと想い悩み始める。「奴隷」である彼女が出した結論とは――。
少女たちの想いを受け、やがてラザルスは危険なギャンブルに打って出る。


18世紀末のイギリスを舞台にした歴史系フィクション……だったね、そういえば。ロンドンを離れてしまって、イギリス感がまるでなかったから忘れてた。そんなわけで目的地バースへ行く途中、馬車の事故で立ち寄ることになった農村での一幕。
元々決着がお金を賭けた真剣な化かし合いなところに、馬車での二人旅になったことと、舞台の農村の土と藁の匂いから、ちょっとだけ『狼と香辛料』に似た空気があった。まあ、キャラクターとその役割は全然違うのだけど。
今回は何と言ってもヒロイン・リーラの描写の濃さ。1巻では性奴隷というインパクトのある立場とは裏腹に存在感が希薄だった彼女。それが今回、ラザルスの枷になっていることへの申し訳なさ、感じられない自分の必要性など、様々な不安が彼女の中で渦巻いている心理描写がしっかりとされているのが、健気で切なくてとても良かった。庇護欲をそそる系ヒロインはこうでないと。
そしてヒロインのキャラが立てばヒーローが引き立つ。
リーラが自分で答えを出すのをじっと待ち、出した答えの無茶に応えるラザルスの男気は格好良い以外に形容しようがない。最近あまり見かけないけど、こういう泥臭く格好良いタイプの主人公はやっぱり良いな。
そんな二人が覚悟を決めた賭博シーンは、リーラの思いがけない思い切りの良さとラザルスへの信頼、ラザルスの賭博師としての矜持と男としての覚悟、色々なものが混ざり合って文句なしの盛り上がりだった。
次から同行者が増えて賑やかになりそう。ところでいいキャラいい性格してたメイドのフィリーさんは残念ながらついてこないよね?