いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ウォーター&ビスケットのテーマ1 コンビニを巡る戦争」河野裕、河端ジュン一(角川スニーカー文庫)

ウォーター&ビスケットのテーマ1 コンビニを巡る戦争 (角川スニーカー文庫)
ウォーター&ビスケットのテーマ1 コンビニを巡る戦争 (角川スニーカー文庫)

「ヒーローになるつもりですか?」「違う。僕はお姫様になりたい」闘うより、護られたい――臆病であることを誇る高校生・香屋歩と幼なじみの秋穂栞が迷い込んだのは、8月がループする街【架見崎】だった。ここを訪れた人々は任意の特殊能力を与えられ、乏しい物資を巡る戦争を繰り広げていた。だが、ふたりが希望した能力は戦闘の役に立たないもので……。生存戦略に反則はない。ルールブックの穴をつく、臆病者の戦いが始まる。

与えられた任意の特殊能力を駆使して陣取り合戦という名の殺し合いの戦争が繰り広げられている、8月1日から31日までをループする廃墟と化した街・架見崎。そこに取り込まれた臆病な少年・香屋歩と幼馴染みの少女・秋穂栞の戦いの物語。
サクラダリセット』の次は『カミサキリセット』ってか。河野さんにとってはデビュー作以来のスニーカー文庫での長編シリーズ。ファンタジアが主戦場の河端さんは初のスニーカー文庫作品(まあ同じKADOKAWAなんだけど)
河端作品は読んだことがないので河野作品基準で言うと、「閉じられた街」「巻き戻る時間」「作中作とのリンク」と、作者が好んで使う仕掛けが随所に散りばめられている“らしい”作品。
ゲームの性質上と主人公・香屋の性格上、決められたルールの穴をいかに突くかに重点が置かれているため、この1巻は懇切丁寧にルール説明がなされている。丁寧過ぎて、小説の設定を考える時の穴がないか確認する作業を、そのまま見せられているような感覚に陥るのは流石にどうかと思うところもある。
でも、その過程を経たからこそ、ルーキーで臆病者な弱い存在であるはずの香屋の思惑通りに物事が進んでいく様子に、快感を覚えることが出来る面もある。
今回は1巻とあって状況とルールの説明に徹したところがあるので、本番は次からだろう。おあつらえ向きの衝撃ラストのダブルパンチだし。
このラストだと次は相棒・秋穂メイン? 作中アニメ『ウォーター&ビスケットの冒険』で香屋が好きなウォーターのキャラクターや名言は語られていても、ビスケットのキャラクターは少女であること以外何も語られていない。ビスケット派の秋穂の目的や思想と共に語られるのだろうか。
とにかく、自分好みの面白いシリーズになりそうなので続きが楽しみ。