いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「終末なにしてますか?もう一度だけ、会えますか? #07」枯野瑛(角川スニーカー文庫)

一人の少年が作り上げた舞台で、一人の少女が英雄となった。〈獣〉に対抗できる黄金妖精の存在は明るみとなり、浮遊大陸群が小さな守護者に沸く一方、38番浮遊島に侵食の足音が迫る。
「黄金妖精(レプラカーン)をしてくるよ。先輩たちには、ちと悪い気がするがね」
パニバル・ノク・カテナは、〈十一番目の獣〉に呑まれた39番浮遊島に立つ。その力の限りを尽くして、〈獣〉との戦いへと臨むために。これは作られた英雄たちの、終わりに近づく物語。


世にその存在が知らしめられた黄金妖精。フェオドールが遺していったものの成果と問題が示される第7巻。表紙の通りにパニバルがメイン。新シリーズの4人の中で最も何を考えているか分からないパニバルの胸の内がついに明かされる。
ふたを開けてみたら過去一番共感しやすい娘だった。
恋に全力に生きたクトリ。その先輩のように生きたいと願うティアット。自分より他人の幸せを願ったラキシュ。おバカっぽいコロンはちょっとわからないが、これまでの黄金妖精たちの生き方は尊く、それゆえに過酷な運命に涙を流してきた。でも、共感しやすいタイプの想いではなかった。
それに比べてパニバルの我欲が少なく、死にたい訳ではないが長生きしたいわけではなく、掴んだ幸せが壊れるくらいならいっそ、という考え方は分かりやすく、部分的には共感できてしまう。
表紙で泣いているのはパニバルで、あらすじからすると逝きそうなのがパニバル。泣く方になるのか、泣かせる方に回るのか、やきもきしながら、結局は泣かされるんだろうと思いながら読んでいたので、感情移入したらマズいなあと思ったら……このシリーズでこの終わり方あるんだ。まさかの結末に戸惑い半分笑顔半分。
但しその後のエピローグは、滅亡を回避できる可能性に、〇〇したバカ男二人の発覚、あの子を起こそうとする存在と、前シリーズからの読者を泣かせる準備が着々と進んでいることを思わせるものだった。
次回、激動必死。今回泣きがなかっただけに次が怖い。