いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん まだ見ぬ場所のブイヤベース」友井羊(宝島社文庫)

早朝にひっそり営業するスープ屋「しずく」。シェフ・麻野がこしらえるスープにかかれば、お客の心と不思議な謎があっという間にとかされる。女の子の母親に幽霊が乗り移った? ジビエにまつわる記憶が抜け落ちたのはなぜ? 亡き大叔父が家に隠したお宝はどこ? そして変化を迫られる理恵の進路は? 絶品スープに浮かび上がる滋味豊かな人間模様。お腹と心を温めて、元気を注いでくれる全5皿。

全5皿× 全5話全13皿(+2皿)〇


店主の麻野がその洞察力で身近な問題を解決するスープ屋「しずく」の日常ミステリも、早いものでもう第4弾。
これまでも娘の露が持ち込む問題があったので、子供の問題が出てこなかったわけではないが、どちらかというと「大人の話」なイメージがあった。それが今回は、親の不調に感化される子供、蓋の閉じられた虐待の記憶、そしてストレートに小学生のイジメの問題。
このシリーズは元々、人の心の傷に触れる話題であることが多く、身につまされることの多いシリーズであるが、そこに「子供」というキーワードが加わると、ここまで苦みが増すのかと。常に穏やかな麻野が珍しく感情的になっている様子に余計にそう感じる。
それでも最後まで読めば、その苦みを包み込み、心と(飲んでいないのに)体まで温めてくれるスープが待っている。この読み終わった時にホッとする、独特な安堵感がたまらなく好き。
また、相変わらずスープは種類が豊富でどれもこれもが美味しそうだから困る。当然のように腹が減る上に、深夜でもスープくらいかなラいいかな?という誘惑付きなのが恐ろしい。
さて、最大の注目事項である麻野と理恵の仲は、
理由さえ見つかればデートのお誘いがすんなりできてるのは進歩、なのかな?一応。でも心が近づいているのは間違いないだけに、やっぱりもどかしい。ラストは理恵のあまりの鈍さに少々呆れてしまったし。でも、これが二人のペースなのだろう。
そんな二人の一つの区切りが読めるまで長く続いてくれると嬉しい、いつまででも読んでいられる物語。