いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「編集者ぶたぶた」矢崎存美(光文社文庫)

小説家の礼一郎は、依頼をくれた編集者と初めて会う約束をした。待ち合わせの喫茶店に現れたのは、どう見ても小さなピンクの、ぶたのぬいぐるみ。これは夢だ、と思った礼一郎は、おもしろがって、ぬいぐるみに新作の構想を話し始めるが……(「長い夢」)。編集者・山崎ぶたぶたは、本や雑誌を作りながら、出会う人々にも、元気をくれるんだって。大ヒットシリーズ!


シリーズ29作目。今回のぶたぶたさんは編集者。
編集者というからには本や雑誌を創る作業がメインだろうと思っていたら、結局飯テロ小説じゃん!(歓喜
編集者なら打ち合わせなどで喫茶店に行く機会は多いだろうし、グルメ雑誌だってあるよね。盲点だった。そんなわけで、第二話「グルメライター志望」を筆頭に、いつも以上に食べているぶたぶたさんが拝めるのが嬉しい一冊。何せ、初見のぶたぶたさんに驚く主人公たちの反応の中でも、食べ物関係の反応はニヤリとしてしまうものが多いので。消えた?とか、食べた後はどこに行くんだろう?とか。特に今回の飲み物を飲んだ後の「絞ったら出てくるのでは」は傑作だった。
こう書くと食べてばかりのようだが、そこは真面目なぶたぶたさん、ちゃんと仕事はしているし、彼との出会いをきっかけに主人公たちの人生が好転していく様子に、心が温まるのと安心感が得られる読後感はいつも通り。
主人公がほんの少しの勇気から一人の女性を助け、彼女自身の転機にもなっていく「流されて」が、タイトルの元となっている沁みる台詞を含めてお気に入り。
さて、次は記念すべき30作目。どんな職業になるのかな?