いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「アジャンスマン:あるいは文化系サークルのラブコメ化を回避する冴えたやりかた」御手座祀杜(富士見ファンタジア文庫)

休学を経て二度目の高校3年生となった留年生・山繭旁は、かつて所属していた部活――伝説の創作集団を生み出した《現代コンテンツ表現調査部会》(通称RP会)の部室を訪れた。
「じゃ~ん! これが私のコスプレ写真です!」「二次元とかマジ生きてるし!」……しかし、すでにここは後輩女子たちがオタトークを繰り広げるだけのゆる~い空間に一変していた!?
だが意外にも、小説、イラスト、声優、コスプレ、それぞれのジャンルで類稀な才能を発揮する彼女たち。旁は再び《改編(アジャンス)》の能力を行使することを決意した。申請〈PR会〉始動のために。
新世代オタク少女たちの夢を叶えるべく“創作”でみちびけ!

最近やや流行りの同人創作系の部活ラノベ


ビックリするほど全てがちぐはぐ。
タイトルに反してラブコメ化を回避する気なんて一切ないし、著者紹介では入選になっているのに、あとがきには受賞を逃した最終選考拾い上げって書いてあるし。どっちだよ。
まあ、ここまでは些細な問題なのだけど、内容の方はさすがに些細とは言えない。
SF作品をファンタジー作品にアレンジしている時の文章の熱量と、その前後のラブコメの取ってつけた感のギャップが凄い。創作に対する考え方や、ライトノベルやweb小説に感じている事を語っている時など、「創作」に向き合っている時は筆が乗っている感じがするのに対して、ラブコメはテンプレをそのままなぞったみたい。なのでヒロインたちに魅力は感じられない。これ、著者はもっと硬派に創作ものをやりたかったのでは? 
あと古いオタク知識のパロディネタが矢鱈と出てくるが、これはやりたかった方かな。語りたい気持ちはわかる。ただ、名前を変に改変してあるから読みにくいし、知らない若者が調べにくい。普通に一部伏字でよかったのに。というか、角川作品はそのままじゃダメなの?
ヒロインたちをばっさりカットして、論文調にした方が楽しく読めそうな気がするくらい、ラブコメに気持ちが向いていない作品だった。あとがきを読むと意に沿わない魔改造の結果のようにしか思えなくて、居たたまれない読後感に。