いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「オミサワさんは次元がちがう」桐山なると(ファミ通文庫)

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)
オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

大学二年の雪斗には気になる女性がいた。芸術科の小海澤有紗。無表情、無感情で人と関わろうとせず、そこかしこに絵を書き散らすも、その落書きが数百万の価値を生む百年に一度の天才。人とのコミュニケーションが断絶してしまっているそんな小海澤さんが気になり、なんとかお友達にこぎつけた雪斗。しかし天才との変わった交流を楽しむはずが、彼女の重大な秘密を共有することになり――。次元が違う彼女とのもどかしくピュアなキャンパスラブストーリー。

注)本日の感想はいつにも増してネタバレです。


次元が違うってそういう意味かよっ!
オタクと二次元キャラのラブコメが予想されるタイトルで買った。しかし、あらすじを読んだら普通の男子大学生と芸術に秀でたコミュ症女子大生の青春ラブストーリーらしい。まあ、どっちのタイプも嫌いじゃないから問題ないだろうと思って読み始め、結果出てきたのは……
SFホラー。これは流石に予想外。
というわけで、言語や絵、図形などの認識が段階的にズレていく、身体はそのままに意識だけがパラレルワールドに飛んでしまう「スライド」が起きている少女と、彼女に一生懸命近づいた為にそれがうつってしまった少年の物語。
謎の言語「ごんごんじー」に始まり、主人公今城君の周囲に起こる異変の数々。次第にその色が濃くなっていく演出が上手く、意味不明な文字の羅列が頻発する第4章で怖さはピークに。
それでいて着地地点はしっかりラブコメなのがにくい。
ヒロインが喋れる状態になればかなり多弁な可愛い人だったり、別次元(別認識)で書かれた言葉や絵画は意外と単純でしょーもないことだったり恥ずかしいことだったりで、ネタさえ割れれば実は普通にラブコメしてたっていう。ややこしいわ!と思いつつ、微笑ましい二人のやり取りにニヤニヤしてしまうのを抑えられない。
そしてトドメとばかりに最後の挿絵。これはズルい。少なくとも三種類の意味で笑わせにきてるもの。こんなん耐えられませんわ。
ブコメor恋愛小説と思わせておいてからのSFホラー、でも最後はやっぱりラブコメと、感情の起伏がジェットコースターな作品。予想を何度も裏切られて楽しい一冊だった。