いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「高崎グラフィティ。」古宮九時(メディアワークス文庫)

高崎グラフィティ。 (メディアワークス文庫)
高崎グラフィティ。 (メディアワークス文庫)

故郷を捨てれば、私たちは強くなれるのでしょうか――。東京まで新幹線で約一時間。不自由はなく、あえて越える必要のない“一時間の境界線”に囲まれた街、高崎。地元に閉塞感を覚える美紀は、専門学校に通うため上京する日を控えていた。しかし高校卒業の日、父親が入学金未納のまま突然失踪。優斗ら幼馴染四人と共に父親捜しを始めるが、彼らにも秘密があって……。第1回未完成映画予告編大賞グランプリ受賞。将来、恋、家族に悩む若者を痛切に描く、話題の感動作を小説化!

あ、これ企画ものの映画の小説化だったのか。道理で……。


不便はないが変化もない地元で大人になっていくことに疑問を感じ、鬱屈とした想いを抱える高校生たちの群像劇。
メインで描かれるのは、仲良く付き合っていても必ずある相手の「ちょっと嫌だな」と思うようなところを前面に出して書かれる、高校生たちの人間模様。人間関係が重くて暗い。でも、それを乗り越えて育まれる友情まで行くので、青春感は申し分ない。
しかしこれ、ストーリーや設定が雑過ぎやしませんか?
結構序盤からオチが見えているような気がしてはいたが……彼らがしてきたことが取り越し苦労だったと分かる脱力系のオチが、予想通りそのままの形で出てきた時のがっかり感は相当なものだった。
それに設定には現実味がない。
今の高校で先が決まってない状態で卒業を迎える生徒がこんなに多くいるなんてこと有り得る? しかも東大を目指すような奴がいる学校で。昭和の話なら分からなくもないが、普通にスマホ使ってるからなあ。現代劇には最低限のリアリティが欲しい。
と、細かいことが気になってる時点で楽しめてないことだよね。
古宮九時先生が描く若者たちは相変わらず素晴らしかった。でも土台がこれでは素直に楽しめない。