いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「隠れオタな彼女と、史上最高のラブコメをさがしませんか?」朱月十話(ファミ通文庫)

隠れオタな彼女と、史上最高のラブコメをさがしませんか? (ファミ通文庫)
隠れオタな彼女と、史上最高のラブコメをさがしませんか? (ファミ通文庫)

高校生活を楽しむために『ゲーム制作部』を立ち上げた結城雪崇。すぐに部員募集をかけると、超一流の頭脳と美貌を持つ倉嶋千愛、綺麗なイラストを描く有栖川フェリス、感受性豊かな小説を書く長瀬遙が入部する。見目麗しい美少女(?)が加わり、雪崇は部活動=青春を謳歌できると喜ぶが、三人にはある秘密が隠されており……!? 果たして天才だが一癖も二癖もある彼女たち(?)に囲まれた雪崇は、楽しい青春を謳歌できるのか!?超弩級青春ラブコメ誕生!!

中学の時に若さと情熱で人気ギャルゲを作り上げてしまった少年が、それを超える二作目を作るために仲間を集う、本気でゲーム制作をやる学園青春ストーリー。
あらすじの「高校生活を楽しむために」なんて嘘八百。最近流行りの同人活動系部活ラノベとは一線を画す、本気の制作を見せてくれる作品。主人公がすでに商業で成功しているガチ勢で、制作に関する発言は基本的に意識が高いし、ディレクターの重要性を説き実践する部活ラノベは他にはそうないだろう。
過去の成功が枷になって足掻く主人公の苦しみや、作品の為にはたとえダメ出しでも真剣に意見をぶつけ合う様子など、この手の作品らしい青春を感じさせる要素は十分で、そこに気になる女の子のために頑張る男の子などの王道も加わって、良質の青春ストーリーに仕上がっている。
ただ、ラブコメにしては真面目すぎるかなと。
何事もきっちり説明しないと気が済まない生真面目な地の文は、作者の巨乳と男の娘への並々ならぬ愛を語るところではプラスに働いていたものの、全体的には堅苦しいイメージが付きまとう。また、その気真面目さが邪魔してネタ台詞やサービスシーンもやや中途半端。ゲーム制作への真摯な姿勢と一生懸命な部員たちを生かすためにも、コメディ部分はばっさりカットしてしまってもよかった気がする。
それでも、いい意味であらすじに裏切られたという印象。青春を堪能した。