いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「小説の神様 あなたを読む物語 (上)」相沢沙呼(講談社タイガ)

小説の神様 あなたを読む物語(上) (講談社タイガ)
小説の神様 あなたを読む物語(上) (講談社タイガ)

もう続きは書かないかもしれない。合作小説の続編に挑んでいた売れない高校生作家の一也は、共作相手の小余綾が漏らした言葉の真意を測りかねていた。彼女が求める続刊の意義とは……。
その頃、文芸部の後輩成瀬は、物語を綴るきっかけとなった友人と苦い再会を果たす。二人を結びつけた本の力は失われたのか。物語に価値はあるのか?本を愛するあなたのための青春小説。

痛い痛い、刺さる刺さる。
内気な後輩成瀬の中学時代の失敗は痛々しくて見ていられないし、ネット批評の話は身に覚えがありすぎて「ごめんなさい」したくなるしで、大変に「痛い」話だった。
書ききったと思った作品の続編を書くことの意義を見出せずに悩む誌凪が話の軸。それをきっかけに読む側と書く側、主は後者から「小説」に対する様々な意見が語られるのが、この上巻の特徴。
色々な意見が出てくる中で、先輩作家の春日井さんの言はどれもしっくりきた。努力型の主人公が流行らない話は、自分が何でもかんでも成功する物語のどこが面白いのか理解できないタイプなので、今回一番共感した意見。まあ、あそこまで辛辣な感想だけ並ぶことはまずないだろうけど。
それに対して、メインの二人は変わらず物語に対して真摯で潔癖で、ちょっと遠い存在。
自分の感情にストレートで意見もストレートな誌凪はもちろん、諦めたように突き放した意見を言う一也にも諦めきれていない空気がありありで、理想を追うことを厭わない姿勢が尊くもほろ苦い。
そんな中で誌凪「文章は呼吸」という意見は腑に落ちた。リズム・テンポがどうしても合わない文章ってあるよね(この直前に読んだ作品とか)
物語は、捻くれてしまった売れっ子作家の身も蓋もない「売れる本」論で、良くも悪くも感情がニュートラルに戻ったと思ったら、最後に傷口をさらに抉る無慈悲な攻撃を受けたところで下巻へ。
この状態で一ヶ月待たされるとか、、、かなり辛い。