春――。名門キンバリー魔法学校に、今年も新入生がやってくる。黒いローブを身に纏い、腰に白杖と杖剣を一振りずつ。胸には誇りと使命を秘めて。そんな魔法使いの卵たちを迎えるのは、桜の舞う満開街道と魔法生物たちのパレード。
が、希望に胸躍らせるのも束の間。キンバリーの孕む数々の脅威が彼らに襲い掛かる。気まぐれに生徒を飲み込む地下迷宮、怪物じみた上級生たち、亜人種の人権を巡る派閥の対立――。
そんな魔境を仲間と生き抜く中、オリバーは一人の少女と縁を結ぶ。腰に日本刀を提げたサムライ少女――ナナオ。
二人の魔剣を巡る物語が、今、始まる。
良いことをしたら、ご褒美はほっぺにちゅう。そんな微笑ましくほのぼのとした学園ライフが繰り広げられて……いる筈がないですよね。宇野先生ですもの。今作も登場人物たちにはそれぞれに過酷な運命が待ち構えていることを十二分に予感させる、そんなスタートだった。でも、ほっぺにちゅうは本当だから！
物語としてはオーソドックスな剣と魔法の学園バトルファンタジー。
主人公オリバーが入学式の日に出会った男女計6人は、ちょっとした事件を経てそのまま仲良しグループに。何やら内に秘めたオリバーに、死にたがりのサムライ少女ナナオを中心に、他のメンバーも家柄には一難、性格には一癖あるメンバーながら、誰もが友達想いで他人の心を慮れる気持ちの良い仲間たち。これから多くの苦難を共にする中で、彼らはこの仲間のために戦っていくのだと、先の感動に期待を持たせるくれるものだった。
舞台となる学園がかなりクレイジーなので初めにしては少々試練が過激だった気もするが、内容としてはメンバー紹介がメインの実に学園ものの1巻らしいものだった……プロローグとエピローグを除けば。
衝撃のエピローグと、それで分かるオープニングの意味。主人公に課せられた使命もそうだが、彼を除く5人に課せられた使命の予想外の大きさに打ちのめされる。
彼が本願を成就させてしまうのか、彼女を含む仲間たちがそれを食い止める一手を放つことが出来るのか。次回からが楽しみだ。
