いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「活版印刷三日月堂 雲の日記帳」ほしおさなえ(ポプラ文庫)

活版印刷三日月堂 雲の日記帳 (ポプラ文庫)
活版印刷三日月堂 雲の日記帳 (ポプラ文庫)

小さな活版印刷所「三日月堂」。店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった言葉。仕事を続ける中で、弓子が見つけた「自分の想い」と、「三日月堂の夢」とは――。感動の涙が止まらない、大人気シリーズ完結編!

活版印刷所を舞台にした短編連作小説、第四弾。シリーズ完結編。



良かった。弓子さんが幸せを掴んでくれて本当に良かった。
このシリーズは一貫して俯いている人を前向きにさせる物語だったので、必然的に不運な人や身内他に不幸があった人が各話の主人公として多く出てきた。そして、活版印刷という昔ながらの味のある印刷物に惹かれて訪れた彼らが前向きになれたのは、三日月堂店主弓子さんの人柄があったから。しかし、その弓子さんこそが天涯孤独で頼れる人がいない、最も不安で俯いていてもおかしくない人物だった。
それにも関わらず、作中で言われていた「あなたはいつも人のことを考えすぎだ」の言葉通り、ここまでずっと訪れた客の為に心を砕いてきた弓子さん。そんな彼女が報われなかったら嘘だ。
そんなハッピーエンドに花を添えていったのが、最後のお客さんが語る大人になってからの夢の話。
学生時代の夢も、苦しんだ後に得た小さな幸せも、不幸にして手放さなければならなかった古本屋店主が語る「人と夢の関係」は深く重い。でも沁みる。そんな彼の夢と、弓子さんの三日月堂の夢が、これまで弓子さんが頑張ってきたからこそ集まってきた人達の手によって、本という一つの形になるシーンは、紛れもなく感動の瞬間だった。そりゃ泣きますよ(涙腺弱いもの)
最後までよかった。出会えて幸せなシリーズでした。