いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「やがて恋するヴィヴィ・レイン7」犬村小六(ガガガ文庫)

やがて恋するヴィヴィ・レイン (7) (ガガガ文庫)
やがて恋するヴィヴィ・レイン (7) (ガガガ文庫)

「楽園(エデン)が墜ちてくる」――。遂に起動したワールド・トリガー。三界を隔ててきた「壁」の消失が迫り、エデン評議会は飛行艦隊によるグレイスランド爆撃を決断する。ジェミニを説得するため旅立ったファニアはグレゴリオの奸計により再び窮地に。グレイスランド統一を目前に控えたジェミニは、ルカの死を知り心身に変調を来す。エデン飛行艦隊への奇襲をもくろむルカとヴィヴィは隠れ家での共同生活をはじめるが……。犬村小六が贈る、革命と戦争、恋と冒険の大叙事詩が、ついに完結!!

『やがて恋するヴィヴィ・レイン』でした…………そうだよなあ。タイトルがやがて“恋する”ヴィヴィ・レインだもの、そりゃあこうなるよ。
ばっちりファニア派の自分には、彼女の個人としての幸せは望み薄だと状況から理解はしていても、心では納得していないから、束の間の幸せとして描かれるルカとヴィヴィの日常が堪らない。ヴィヴィさんてばツンデレでやんの。ルカも楽しそうに喧嘩しちゃって、もう。しかも、いざ決戦の舞台に立ったら、戦闘の前中後ろの全てで見せつけてくれちゃって。
おかげでラスト1ページ、「後史」の最後の一言が切なくて切なくて。ファニアとしたら、託された夢を成就させることが出来て満足だったんだろうけど。あの後、年老いてからでも1度は彼女の元を訪れていたのだと信じたい。
最後の一言で切なくなったと言えばもう一人。ヴラドレン皇太子。すまん、ラヴちゃん。あなたの存在をすっかり忘れていた。
最終巻にして地上の政治の舞台では、脚本に演出、主役を助ける名脇役まで一人でこなす獅子奮迅の活躍。彼が歴史を使ったと言っても過言ではないだろう。あれだけ頑張っても意中の人に振り向いてもらえない辛さは、察するに余りある。でも、それがどうも演技っぽく見えて笑えてしまうのは彼のキャラクターゆえか。こういう愛すべき馬鹿な男キャラも、作者の魅力の一つと勝手に思っている。まあジェミニみたいな狂人も必ず出てくるのだが。
ある世界の変革期に、時代の波に抗い続けた若者たちの物語。誰もがやり切ったのだと思わせてくれる、大団円で大満足な最終巻だった。お二人はお幸せに。ちくしょー