いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「月とライカと吸血姫4」牧野圭祐(ガガガ文庫)

月とライカと吸血姫 (4) (ガガガ文庫)
月とライカと吸血姫 (4) (ガガガ文庫)

宇宙開発が行き詰まるなか開催された万国博覧会。広報を務めるバートとカイエは『宇宙の平和利用に関するカンファレンス』への参加を要請される。そして、そこに共和国の英雄二人も急遽登壇することに。憧れの二人との対面や近未来的なパビリオンに興奮する一方――「もはや核戦争は避けられません。ならば、先にしかけるべきです」世界が未曾有の危機を迎えようとするいま、二大国の若者たちは何を想い語るのか。これは、宙に焦がれた人と吸血鬼が目指す、三十八万キロという途方もない旅への序章。宙と青春の物語第四幕。

バートたちの居る連合王国とレフたちの共和国、日増しに緊張が増し開戦直前まで行ってしまう二国間の関係。政治色がぐっと濃くなるシリーズ第4弾。
冷戦時代の二大国をモチーフに書かれているのだから、こうなることは想像に難くなかったが、それでも若者たちの夢が、大人たちの醜い権力・利権・プライド争いによって踏みにじられていく現実は辛いもの。
しかしだからこそ、それに抗う若者達が光り輝いて見えるのも事実。バートとカイエ、二人が互いの信頼を深めながら、何人かに背中を押されながら、大博打に出るまでの過程と結末にグッと来た。それに二人の頑張りに触発された連合王国のうら若き首領の勇気にも。
……という大枠の感想はこれまでにして、
イリナちゃんでたー。レフは対応がずっと大人でどこかむず痒かったけど、イリナは相変わらずのツンツンぶりと子供っぽさのギャップがかわいい。カイエには悪いけど、やっぱりヒロインはイリナだわ。
そしてもちろん二組のご対面も。新旧の主人公がクロスする瞬間ってどうしてこんなにワクワクするんだろう。周りの目が厳しく本音の会話は数少なかったけれど、通じ合った瞬間が何回かあって嬉しい気分に。
今回はスペースロマンが感じられるところが少ないのが残念だったけど、かわいいイリナは拝めたし、二国の主人公たちが一緒に夢を見る未来が僅かながらでも見えたしで満足。スペースロマンは次回に託そう。
……と思ったら、この引きか! 失脚も暗殺も防がれたってサラッと書いてあるんだが、なら何が起きるんだ?