いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「魔法科高校の劣等生 司波達也暗殺計画 (1)」佐島勤(電撃文庫)

魔法科高校の劣等生 司波達也暗殺計画(1) (電撃文庫)

西暦二〇九四年の春。暗殺を生業とする少女・榛有希は、その現場をある男子中学生に目撃されてしまう。
憂いを断つべく男子中学生を消そうするも、フィジカルブーストの超能力者である有希でもまったく太刀打ちできない。その謎の少年の名は、司波達也
相手が普通の少年であったなら、
相手が魔法師でなければ、
相手が司波達也でなければ――。
規格外の少年と暗殺者の少女。二人の出会いが運命をより数奇なものへと変えていく。
大人気作品『魔法科高校の劣等生』原作初のスピンオフ開幕!!

達也がまだ中学生の時代、達也を狙うことになる気の毒な暗殺者たちを主人公にした『魔法科高校の劣等生』スピンオフ作品。
今回は達也に殺しの現場を見られてしまった暗殺者の少女・榛有希が主人公。本当は見てしまった方が不幸になるはずなんだけど、そこはまあお兄様ですから。また、ターゲットである達也はちらっとしか出てこないのが特徴。


初めのうちはどう読んでいいものかと悩む作品だった。
レベルを上げだけでは太刀打ちできない理不尽に強い裏ボスに、レベル一桁で挑戦するような有希の姿は、滑稽だけれども本人が一生懸命なので笑うに笑えないし、やられ役にしては本人の過去は重いし、同情するにはやっていることは殺しだし。結局、何も起きないことだけは分かりきっているという虚しさだけが広がっていた。
それが、達也のはとこ・黒羽文弥が物語に加わってくると一変する。まだまだ成長過程修行過程の文弥に相対するには、有希と彼女の所属する組織が丁度いいレベルで、実戦経験から一つ一つ吸収していく文弥に成長を感じ、何度も命からがら逃げきる有希にスリルが感じられる。ただまあ、殺し合いをしているはずなのに、文弥と有希の性格や性質から、忠犬(小型犬)と野良猫が裏路地で喧嘩しているような、微笑ましいとは言わないまでも、割と平和な光景に見えてしまうのだが。本編のインフレに大分毒されてるなw
結局のところ1巻主人公も本編主人公も差し置いて、文弥がメインだった気がしなくもないが、成長譚は好きなのでこれはこれで。
次回はどんな不幸な人暗殺者が出てくるか楽しみ。少しだけでも達也の手を煩わせられる敵は出てくるのだろうか。