いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「アンと青春」坂本司(光文社文庫)

アンと青春 (光文社文庫)

アンちゃんがデパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めて八ヶ月。販売の仕事には慣れてきたけど、和菓子についてはまだまだ知らないことばかりだ。でも、だからこそ学べることもたくさんある。みつ屋の個性的な仲間に囲まれながら、つまずいたり悩んだりの成長の日々は続きます。今回もふんだんのあんことたっぷりの謎をご用意。待ちに待ったシリーズ第二弾!

和菓子屋のアルバイト・梅本杏子が、お客様の言動からその意味を紐解いたり、自分の将来に不安になったり、同僚が抱えた問題に直面したりする、和菓子×ミステリーの『和菓子のアン』の続編。
和菓子屋や製菓の雑学から人の機微を読み解くミステリというより薀蓄小説的な面白さと、お菓子類に限らず何でも美味しそうに食べるアンちゃんの食レポ地の文の飯テロ力の高さ。どちらも前作より磨きがかかっていて、とても楽しい読書時間だった。
ただ一点、気になったことが。
本作のタイトルは『アンと青春』。なのに全然青春を感じない。
友達との京都旅行は、半分が京都を如何に楽しむか、もう半分が嫁姑問題で青春感ゼロ。また、自分の目標のなさと先の見えない未来を嘆いて悩む杏子の姿があるが、そういう悩みは楽観的か悲観的かというその人の性格に依るところが大きく、おっさんでもジジババでも変わらないという認識なので、共感するところは多いけれども若者らしさは感じない。
いったいどこに青春要素が?と思いながらの最終章「秋の道行き」へ。
乙女・立花(♂)の意味深なお菓子に「おや?」 師匠の意味深な言葉に「あれ?」 トドメの薀蓄で「そういうことか!」。ヘルプの店員さんじゃないけど、ぽっちゃり系女子というフィルターにかけて侮っていた。すみません。でも杏子も杏子だ。彼女視点の物語で本人にそういう感情が1mmもないんだもの。
続いたら、甘味×甘味になるのだろうか。愛称は良さそうでも、自分に自信がない杏子と男としての自信はなさそうな立花では、山あり谷ありになりそう。まあ読んでる方はそれが面白いのだけど。