いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「レトロゲームファクトリー」柳内政和(新潮文庫nex)

レトロゲームファクトリー (新潮文庫nex)

過去のゲームを最新機用に移植する会社「レトロゲームファクトリー」。その社長・灰江田直樹とプログラマー・白野高義の元に大口の依頼が舞い込んだ。伝説的ファミコンゲーム、UGOコレクション10本の復活プロジェクトだ。だが開発者は最後の作品の権利のみを買い、失踪していた。一体何故か。横取りを狙う大手企業を抑え、封印ゲームを復活させよ! 現役プログラマーが贈るお仕事小説。

レトロゲームを現代の機種に移植する零細企業を舞台にした物語。
曰くつきのレトロゲームにまつわる発売時のいざこざ&現在まで残る問題や遺恨&失踪したプログラマー探索という、いわゆる探偵ものパート。解析時に出てくるプログラマーならではの話。当時の現場にいたんだろうなと思わせるリアルな苦労話。どれもそれなりに興味深かったのだけど、ある一点があまりに衝撃的でそこにしか意識が向かない。
この作品、何故関係者の生い立ちが揃いも揃ってハードボイルドなのだろうか。
物心つく前に両親が離婚して父親が蒸発。父親の悪口しか言わない母親に反発して育ったという、なかなかハードな人生を送っているプログラマーの女性でまだ序の口。子供の頃に父親がヤのつくお仕事の方から金を借りて大変なことになり、成人してからも人生ハードモードなこの作品の主人公(なのかはよくわからないがメインの視点)の灰江田でやっと中級くらい。
その上にまだ、女性プログラマーの蒸発した父親と若手プログラマーの白野(愛称コーギー)がいる。ここまで説明すると完全なネタバレになってしまうのでしないが、コーギーはもう今生きているが不思議なレベル。
おかげでこの作品の悪役である、口を開けば嫌味ばかり、内心は嫉妬だらけの大企業の橘氏が一番人間らしく身近に感じてしまうという。
面白かったけど、完全に当初の予想とは別ベクトルの面白さだった。プログラマーになるのって大変なんだなあ(←間違いなく間違った認識