いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「理想の彼女と不健全なつきあい方」瑞智士記(MF文庫J)

理想の彼女と不健全なつきあい方 (ファミ通文庫)

大学一年の春、幼馴染みの代々木春菜に誘われサークルのコンパに参加した高幡陸生は、少し緊張しながらも楽しい時間を過ごしていた。そんな中、隣に座っている海音寺美優が酔いつぶれてしまい介抱することに。そして、何気なく彼女の素顔を覗きみるとネットで話題のコスプレイヤー「μ」本人だった!! 突然の事に陸生が驚いていると、美優に「この事は二人だけの秘密にして」とお願いされて……。秘密を持つ彼女との契約関係から始まるラブ・コメディ、開幕。

厳しい家で育ち引っ込み思案のヒロインが、やっと見つけた素の自分を出せる笑顔になれる趣味を、誠実な男の子(主人公)がそれを続けられるために身を挺して守っていく物語。
……おかしい、健全すぎる。
ラノベレーベルから出ているのだから健全なのは当たり前の話ではあるが、ここまでド誠実な主人公と初心なヒロインで、ラブの気配がほとんどしない、純真な青春小説が出てくるとは思わなかった。
一応、周りが恋愛脳な先輩方だったり、負けヒロイン幼馴染の押しがあったりはするので、ラブコメと言えなくもないが、当人たちにその気がないのでラブコメはおまけ要素。それに、趣味がコスプレという点だけラノベらしくオタクっぽいが、ラノベによくあるオタク界隈の人しかわからない小ネタで無理やり笑いを取りに来るようなことはなく、純粋に二人の出会いから主人公の奮闘ぶりまでを楽しむことができるので、ラノベのラブコメらしくない作品と言える。
また、主人公視点で進む物語に幕間でヒロイン視点のエピソードが入って、彼女の心境を丁寧に拾っていってくれるのが好印象。ただ、もう一人幕間がある幼馴染ちゃんは、自分の理想だけを押し付けるだけの我が儘さを露呈しただけだったが。これはライバルにすらなれないだろなあ。
爽やかな気分になれる青春小説としては良かった。ラブコメとして面白くなるかは続刊次第。彼女がゆっくりデレていってくれれば言うことなしだけど、そもそも続刊が出るのかしら?