いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「横浜ヴァイオリン工房のホームズ」上津レイ(メディアワークス文庫)

横浜本牧の片隅に佇む弦楽器修理工房『響』。この店のオーナー響子さんは、美しいが人間嫌いの風変わりな女主人だ。元天才ヴァイオリニスト、人並み外れた聴覚を持つ彼女の事を知る人は皆こう呼ぶ――絶対音感探偵、と。
あらゆる音を聴き分ける力とホームズばりの推理力で、なぜか楽器修理と共に持ち込まれた事件を解決する名探偵。そんな響子さんの下宿人兼助手の僕もまた、彼女の「耳」に救われた一人だった……。
音×謎解き。新しい名探偵が贈る芸術ミステリー登場!


ぼくのかんがえたさいきょうでさいこうなおねえさんを愛でる話。
作者の理想や好みを全てつぎ込んだ、渾身のヒロインだということだけは伝わってきた。なにせ、他はどうでもいいと言わんばかりなので。
これに芸術ミステリーと銘打つのは、芸術にもミステリにも失礼。ホームズ? 怒っていいですか?(そう言う人はすでに怒っている)
以下酷評





音楽要素がググれば誰でも調べられる上辺だけの知識が書かれているだけだとか、主人公の言葉使いや敬語が変で、英文をエキサイト翻訳で日本語にしたみたいなヘンテコな言い回し多数出てくるだとか、家庭料理レベルで女子力高いとドヤ顔している主人公に失笑を禁じ得ないだとか、まあツッコミどころは沢山あるのだが、それ以上に何が酷いって各話の話の流れが酷い。

第一話 主人公の兄の元恋人(ヴァイオリニスト)が自殺した事件
兄と別れる前と後の演奏を聴き比べ、超理論で推理を展開する探偵響子。主人公は音楽素人で聞き比べられず、読者は当然聞こえるわけもなく「は、はあ」としか反応のしようがない。で、問題はその後。
「伝手を使って彼女の昔のカルテを読んだ」 ……はあ? 違法なのを置いておいても、それが出来るならその前の推理もどきの意図は? そこまでの前置きと嫌な想いをした主人公の気苦労の意味は?

第二話 名家所蔵のストラディバリウスが海外で押収された事件
先祖代々伝わってきた名器は偽物だった。じゃあ、高祖父の逸話も嘘なんだ。ショック! ……その二つのどこに関連が? 結果、案の定二つに関係はなく逸話は事実でした。ですよね。
しかも、その後でそれを裏付ける証拠が出てくるのに、当事者の姉妹には何故か伝えられない。それ、お前らだけが知っていても意味のない事実だろうが。教えてやれよ。

第三話 ドイツから来た娘の祖父を探す話
孫と偽っていましたが、本当は認知されていない晩年の子供でした。当然父を恨んでいます。←わかる
その人に対して、
お前の父親もうすぐ死にそうで目も見えないから、会いに来ない別の孫の真似しろ。←鬼か?(ドン引き)
死後、「実はちゃんと君のことを見ていたんだよ!」by探偵。子、感涙。←え??? 煽ってるようにしか思えなかったんだけど……。


キャラクターの言動が自分の感覚や常識の範囲内で動いてくれないから気持ち悪くてしょうがない。日本語で書かれているけど、別の常識を持つ別の民族の話かと思うくらいに意味不明な箇所も。
ヒロインを愛でる描写以外はただの付属品で、やる気がなかったとしか思えない。