いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「賭博師は祈らない (5)」周藤蓮(電撃文庫)

ロンドンの裏社会を牛耳るジョナサンと対立し、一度はすべてを失ったラザルス。だが賭博師としての矜持を奪われ、地の底を這いつくばったその先で、彼は自らが進むべき新たな境地へと辿り着く。
再起したラザルスはフランセスにも勝利し、ジョナサンとの全面対決を掲げた。かつて帝都にいた友人たちが残した、ちっぽけな約束を守るためだけに。
一方、ラザルスの無事に安堵したリーラだったが、彼女は故郷へ帰る為の乗船券を渡されたことに戸惑い、自分が主人に対して抱いていた想いに気付かされる。
――『私は、ご主人さまが好きです』
そしてラザルスはリーラとの関係にひとつの答えを出すことに。二人の物語に訪れる結末は、果たして。


最終巻。
当時のイギリスの史実をベースにした硬派な舞台にヒロインの立場。裏社会がメインのハードボイルドな内容に、語った一から十を知れと言わんばかりの行間を読ませる文章。やっぱりどこをとっても“ライト”ノベルじゃないわ。だからこそ、大好きなんですけどね。
最終巻はその集大成のような話だった。
ラザルスとリーラの語らいは、お互いの嫌なところを言い合うという仲睦まじいベテラン夫婦のようなやり取りだし、ラザルスは最後の勝負で“何もしない”し。
「信じて委ねること」。人生が掛かった勝負でこんな選択をされたら「参りました」としか言いようがない。
彼と仲間たちがこれまで積み上げてきたものが全部出た勝負の仕方に胸が熱くなりながら、ある意味これまでで最もラザルスらしい戦い方で少し笑ってしまう。ずぼら、ここに極まれり。それと同時に、こんなに絵的に映えない、ティーン向けエンタメ作品の主人公に相応しくない戦法を選択する作者の胆力にも感服。
また、間違いなくハッピーエンドなのだけど、それをそのまま語らないラストもこのシリーズらしくて好き。(エピローグのリーラの台詞(板書)で確信したけど、珍しく裏付け(あとがき後)があったのは意外だった)
何を捨てても、何を諦めても、己の正義は貫き通した男の物語。これを格好いいと言わずしてなんと言う。大好きなシリーズが文句なしのラストを迎えてくれて幸せだ。