いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部」武田綾乃(新潮文庫nex)

両親の離婚で引っ越してきた高校一年生の舞奈は、地元の川でカヌーを操る美少女、恵梨香に出会う。たちまち興味を持った舞奈は、彼女を誘い、ながとろ高校カヌー部に入部。先輩の希衣と千帆は、ペアを組んで大会でも活躍する選手だったが、二人のカヌーに取り組む気持ちはすれ違い始めていた。恵梨香の桁違いの実力を知り、希衣はある決意を固めるが。水しぶき眩しい青春部活小説。


二年生二人一年生二人の女子四人だけのカヌー部を舞台にした物語。『響け!ユーフォニアム』の作者らしい、部内の人間関係を中心とした青春模様が紡がれる。
不登校児に、元神童に、劣等感の塊のような少女。親の離婚で引っ越してきた舞奈が最も明るくてムードメーカーになっているような、闇の深いメンバーで構成されている ながとろ高校カヌー部。
そこで繰り広げられる物語は、未成熟な高校生らしい「依存」を多く含んだ人間関係に、女子同士特有のドロッとしたものも足されている(主に二年生コンビが)、なかなかにヘビーなもの。それなのに最後は、今回見学に回った舞奈や先生たちと一緒に一生懸命応援したくなる、青春らしい感動に包まれる。
響け!ユーフォニアム』でもよく感じるのだが、この話の流れで「青春」の感動に繋げられるのが不思議でしょうがない。
特にそう感じるのがタイトル『君と漕ぐ』の意味が分かる瞬間。
四人それぞれに主人公ではあるのだが、学年間に見えない壁を感じるのと、一年生は舞奈から見た恵梨香、二年生は希衣から見た千帆の話が中心で、一冊の中に二つの物語があるような感覚だった。それが、その瞬間にやっと二つの物語が一つに重なった気がして、そこまで読んできた色々な感情が押し寄せてくる。
同封のコラボ掌編に「新シリーズ、始まりました!」とあるから、続きがありそう。プロローグ(未来)まで行くか? まずは舞奈の活躍が読みたいな。