いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「子守り男子の日向くんは帰宅が早い。」双葉三葉(角川スニーカー文庫)

部活はなし、勉強も授業中に全力集中、学校での出来事はどこか他人事――高校生・新垣日向の放課後は両親の手助けと最愛の妹・蕾の育児のためにある。……学年のヒロイン・芹沢悠里が彼の子守り事情を知るまでは。
兄妹仲の良さと学校とは違う活き活きとした日向に魅了された悠里。放課後は新垣家に行き、週末は3人でデート。さらに天然陽キャ女子・恵那唯やクール系美少女の後輩・上月日和も絡んできて、日向の日常は一気に賑やかに!「私は日向君に楽しい学校生活を送ってほしい」「“師匠”って呼ぶね!」「好きです、先輩のこと……」帰宅早い系男子のほのぼの学園ラブコメ

幼い妹のために部活も放課後遊ぶこともせず帰宅する主人公・新垣日向と、そんな彼を見守るクラスメイト達の日常を描く学園ラブコメ


好青年じゃん!
……大変申し訳ない。正直、シスコンが行き過ぎたやべー奴が出てくると思ってた。
過保護ではあるけれど、普通に好青年な主人公が出てきたので少し驚いた。それだけに高校生の身空で幼い妹のために人生を掛けていることに、物悲しくなるところもあるのだが。
そんな主人公・日向を筆頭に、登場人物が他人のことを気に掛け思いやれるいい奴らばかりの心温まる物語。学園ラブコメとあるけれど、学園はともかくラブになるのは次以降だろう。今回に限ってはほんわかホームコメディ。
その温かでアットホームな空気を出しているのが、適度にわがままで適度にいい子な五歳児・妹の蕾ちゃんの存在と、(恐らく)メインヒロインの悠里のキャラクター。
優等生タイプで気遣いが人一倍の悠里と無垢な蕾ちゃんとのやり取りはどれも微笑ましくて、自然と顔が綻んでしまう。日向を含めた三人でのお出掛けは、どう見ても父母子のお買い物風景としか思えない。優しすぎて押しが弱い、他作品なら負けヒロインになりそうな悠里のようなタイプが、こうやって光る作品は良いなあ。
さて、これが後半に出てきたもう一人のヒロイン日和によってどうなるか。
日向との思い出があり、体育会系で気が強そうな日和が出てきたら、悠里は一歩引いてしまいそう。ちゃんと立ち向かえてラブコメらしくなるだろうか?
そんなわけで、ラブコメという枠で見るとまだ準備段階だったけれど、作品全体に流れる空気が温かで、優しい気持ちになれる良い作品だった。