人工衛星テロ『大流星群』で命を落とした天野河星乃。平野大地は彼女を救うため、高校時代にタイムリープを果たす。そこで彼はクラスメートの少女・宇野宙海がアイドルを夢見ていることを偶然に知ってしまう。涼介や伊万里の姿から、夢を追う人生の素晴らしさを学んだ大地。しかし、未来で見てきた25歳の宇野は、夢破れて挫折していた――。失敗が確定した夢は、果たして夢と呼べるのか。大地が苦悩する中、アパートの上空に謎のドローンが出現し、星乃を監視し始める。再び暗躍を始める六星衛一、月見野市に降り注ぐ謎の隕石群、そして地球外生命体発見の情報――。『夢』と『宇宙』がテーマの感動巨編、超展開の第三弾!
人生に失敗し最愛の人も亡くした青年がタイムスリップしてやり直す、SFサスペンス第三弾。
このシリーズが『夢』の物語と言われているのが、どうしてもピンとこなかったのだけど、今回初めてそれを実感できた。
伊万里にしろ涼介にしろ、今までは捻じ曲げてしまった未来を軌道修正していただけだったのが、今回の宙海に対しては純粋に本人の夢を後押ししていたからだろう。親の抑圧で夢を潰され後悔の人生を送ろうとしている少女を、すんでで救い出す啖呵に、また転びそうになった時に差しのべる手。大地がこれまでで一番熱い男に映った。
でも、やっぱり興味をそそられるのはSFサスペンスの方なのだけど。しかも、今回はかなり本気出してきた感じだし。
あらすじの超展開の文句に相応しいまさかの犯人、まさかの展開(注・本編の黒幕ではなく今回の犯人
いわゆるヤンデレ化してしまった犯人のサイコスリラー的な恐怖に、視点を少し変えれば救済の物語が絶望の物語に変わる、この『やり直し』が根本的に持つ怖さ。そしてこの先、話が混沌とすることが確定した恐ろしさ。「怖い」が際立つ後半は目が離せない。
六星は当初から怪しかったけど、今回の犯人のような存在がいるなら、他にもタイムトラベラーが何人いてもおかしくないし、誰が敵であってもおかしくない。
星乃に大地の秘密が知られ、ベレー帽の少女も参戦してくるであろう次回がどういう展開を迎えるのか、楽しみでしょうがない。