いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「叡智の図書館と十の謎」多崎礼(中公文庫)

どこまでも続く巨大な砂漠の果て、そこには古今東西の知識のすべてが収められ、至りし者は神に等しい力を手に入れる図書館があるという――長い旅路の末、たどり着いた旅人がひとり。鎖に縛められたその扉を開かんとする彼に守人が謎をかける。鎖は十本、謎も十問。旅人は万智の殿堂へたどり着けるのか!? 知の冒険へ誘う傑作長篇!


十本の鎖で閉ざされた白い塔。守人の問いに答えるごとに鎖が消えていく仕組みで、塔を目指す旅人が十問の問いに挑戦する。物語は旅人の持つ不思議な石板が、守人の問いの答えに導く物語を、旅人に見せるという形で綴られていく。という体で語られる十編の短編集。
御伽噺ありSFあり、西洋ファンタジーかと思えば和テイストやアメリカンドリームがあり、昔話があれば未来の話もある。そんなお話のビックリ箱のような短編集で、色々なタイプの話が楽しめる。
特に後半3話がSFで、それらが守人と旅人の正体や、10話終わった時の結末に繋がっていく話の展開が見事。
……見事だとは思うのだけど、前7話はと後ろ3話の繋がりが希薄なのが気になる。
一見関係なさそうな話は少しずつ繋がって結末に向かっていく話と言えば、作者のデビュー作『煌夜祭』を思い起こすのだけど、『煌夜祭』の驚きを10とすると、本作は2か3がいいところ。
面白くなかったわけではないけれど、中途半端で消化不良。各話を繋げるなら全が繋がるようにして欲しかったし、教訓を含む御伽噺的な話で行くなら最後までそれで貫いて欲しかった。