いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「好感度が見えるようになったんだが、ヒロインがカンストしている件」小牧亮介 (角川スニーカー文庫)

ピンクの蚊に刺され、“他人の自分に対する好感度”が見えるようになった高校生・桐崎冬馬。知り合いは30、友達は70が普通なのに、美少女四天王・九条桃華の数値は100と最初からカンスト。「友達になってほしい」という桃華とメッセージのやりとりや放課後デートを重ねる。冬馬が何か失敗しても、彼女を待たせても常に好感度は安定の100。真面目で照れ屋な彼女に惹かれていく冬馬だったが、桃華の親友であるツンデレ女子・如月結衣の数値が-50、さらにモテ女子雪村希の数値は-100! とはいえ結衣とは桃華の話題で盛り上がり、遠足でぼっちになった希と過ごしたりして、彼女たちの好感度も爆上がりに!?


なんだこれ、身悶えしそう!
好感度の可視化というので、それを利用して恋愛強者に成り上がったり、逆にそれに振り回されて失敗したりする話を想像していたら、全く予想外のものが出てきた。
初めて恋を知ったわんぱく小僧みたいなピュアな主人公と、引っ込み思案で大人しいヒロインによる、初心×初心なラブストーリー。きっかけのエピソードがしっかりしていて感情移入しやすく、二人とも初心者な感じが最後まで続くので、初恋の甘酸っぱさと、傍から見るむず痒さを最初から最後まで味わえる一冊になっている。
ただ一つ気になるのは、好感度が見える設定の影の薄さ。
ヒロインはカンストから数値変動しないので、見える意味はあまりない。他のキャラは変動するが、ちょっと空気読むのが苦手で間違いなく良い奴なこの主人公なら、好感度が見えようが見えなかろうが全く同じ行動をしただろうと思われる。主人公の行動に影響しない設定は果たして必要なのだろうか?……まあ、いいか。二人が可愛かったから。
設定を使えているとは言い難いし、文章もどこかたどたどしいけれど、それを含めて「初心(うぶ)」を楽しめる作品だった。面白かった。