いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「さとり世代の魔法使い」藤まる(双葉文庫)

「北条雫、19歳。どこにでもいる平凡な女子大生のようですが…実はわたし、平成最後の魔女なんです!」祖母から魔女の能力を受け継いだ雫の前に、ある日、10年ぶりに幼馴染の爽太が現れた。「魔法で人助けなんて時代遅れ」とすっかり冷めている雫だが、爽太はかつて約束した「魔女の使命」を果たそうと一生懸命。雫はしぶしぶ六つの魔導具を取り出すが……なぜ、爽太は雫の前に現れたのか? 雫が「魔女の使命」を果たした時、その切ない理由が明らかになる。心震える、愛と家族の物語!


女子大生にして平成最後の魔女、主人公の雫がおバカで残念で、とても愛おしい。
人付き合いが苦手でぼっち、恋愛や人付き合いは無駄だと饒舌に語ってしまう痛さ、メンタル激弱でヒステリー気味と、そりゃもう欠点ばかりが目立つ残念な少女なのだけど、誰にも負けない長所が一つ。人の痛みに敏感で、人一倍優しくて、誰かの幸せや笑顔のために一生懸命になれる女の子だということ。浮き沈みの激しいギャップの効果なのか、「ダメな子ほど可愛い」効果なのか、話が進むごとに雫のことが好きになる。
そんな彼女が幼馴染の爽太と取り組む「魔女の使命」=魔道具を使った人助けは、笑いあり涙ありのハートフルストーリー。「笑い」に特化した二章は人前で読むのは危険かもしれない。「涙」は三章四章で家族もの。依頼者の話と、家族と上手くいっていない雫本人の思い出が重なり合って、涙腺を刺激してくる。
細かいことを言うと、魔法使いの設定は割といい加減で、魔道具や爽太の設定は書きたいことに合わせて強引にくっ付けた感じもしないでもないが、魔法使いが本題の物語ではないので気にしない方向で。
女の子の可愛さ、羽目を外した時の勢い、いい話で締める時の泣かせ力。藤まる先生は一般文芸に行っても藤まる先生だった。