いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編」武田綾乃(宝島社文庫)

部長=黄前久美子、副部長=塚本秀一、ドラムメジャー=高坂麗奈の新体制で新年度を迎えた新・北宇治高校吹奏楽部。またもや少々クセのある新入部員に加え、今年は強豪・清良女子高校からの転入生である黒江真由が入部したことにより、部内に再び波乱が巻き起こる。はたして久美子たちは、悲願の「全国大会金賞」を成し遂げることができるのか……? 吹部青春エンタメ小説、いよいよ最終楽章!


ついに久美子たちが最上級生になる、三年生編前編。
黄前久美子“部長”……違和感のある響きだ。
気配りが出来てバランス感覚に優れていて、先輩後輩問わず思わず頼りたくなる空気が出てるらしい久美子以上の、適任者はいないだろう。期待通りにみんなの不満を丁寧に聞く理想の部長像が描かれていた。
一方で、とにかくやることの多い強豪校の吹部の部長は、真面目で心配症で自分を犠牲にしかねない久美子には、最も向いていない役職なんじゃないかとも思う。進路のことを考える時間も自身の練習も無いことがありありとわかるし、案の定周りの何気ない一言に過剰に反応して少しずつ傷を溜め込んでいる久美子が、いつか爆発しそうで怖い。
爆発と言えば、地雷原か?と言いたくなるほど、不穏分子いっぱいなんですが(^^;
イマイチ馴染めない強豪校からの転入生・真由、真由の演奏に心穏やかでない久美子、一年生たちの麗奈への不満、滝先生への些細な不信。ちょっと上げただけでもこんなにも。どれもが小さいズレで、でもどれも無視できない違和感で。それでいて部は現状上手くいっているのが逆に怖い。いったいどれを踏んでしまうのだろう?どれが爆発するんだろう? 奏かすずめ辺りが何かやらかしそうなんだよなあ。
と、怖い怖いばかりになってしまったけれど、そこは『響け!ユーフォニアム』。雨降って地固まったあとに、最後はきっと泣かせてくれると信じているので、後編が今から楽しみ。