いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「鬼畜の僕はウサギ先輩に勝てない」三咲悠司(HJ文庫)

郷土史研究部とは名ばかりでウサギ先輩(本名:稲葉白兎)の女子高生らしからぬ趣味を実践するだけの部活動に強引に入部させられたキタロー(本名:鈴木太郎)。
今回誘われたのも隠れキリシタンの郷として村興しを始めた村の取材という胡散臭いことこの上ない物だった。
合宿旅行と聞けば、たまらなく魅力的な話なのだが、どうせロクなことにならない……。と、思いつつも先輩の笑顔と行動力には逆らえないキタローであった。
不思議な事件に巻き込まれがちなウサギと鬼の怪異譚、始まります。


高校の郷土史研究部が真面目にフィールドワークしてるのと、これだけオカルト要素が薄くて(完全になしではない)民俗学を取り扱うのは珍しい。
……すみません。
他に良いところは見つけられませんでした。和遥キナ先生の絵もなんだかいつもより雑に感じるし。
帯やあらすじには何も書いてないけれど、新人賞の奨励賞なのか。道理で……。


以下酷評


基本的に文章が拙いのは、新人賞ということで百歩譲って目をつぶるとしても、説明するのが苦手なのか面倒くさがりなのか、読者に何かを伝える努力が足りてないように思う。
プロローグ後に前回のあらすじ風の説明が入る1巻or単発とは思えないスタートから、そのちょっと説明しただけの過去の出来事が作中で当たり前のように出てくる、自分たちだけが分かる会話。直前の説明だけで急に使い出す異能。察しが悪すぎる主人公も察しが良すぎる先輩もご都合主義としか思えず、とにかく置いてけぼり感が強い。シリーズものの3巻から読まされた感じ。
作者の脳内では話が繋がっているのだろうけど、それが読者に伝わらなければ意味がない。
そもそも普通に入学・出会いから始めればよかったのに、何故中途から始めたか。書きたいエピソードを書くのも新人賞作らしさではあるけれど、それならこのエピソードを出会いの話にすればいいわけで。
悪い意味で新人賞らしい作品だった。