いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「七つの魔剣が支配する III」宇野朴人(電撃文庫)

オフィーリアが魔に呑まれ、ピートがその使い魔に攫われた。キンバリーの地下迷宮に消えた生徒数の多さに、学生統括のゴッドフレイをはじめ、上級生らが奪還に向かうも救出活動は難航してした。
迷宮の深みに潜む魔女を相手に、自分たちに何が出来るのか? 苦悩するオリバーらに、ある人物が取引を持ちかける。それは彼らにとっての光明か、それとも破滅への誘惑か。
目指す場所は地下迷宮の更にその奥。想像を超えた環境と罠、恐るべき合成獣たちが行く手を阻む。果たして彼らは、サルヴァドーリの攻防にたどり付き、友人を取り返すことが出来るのか――。


攫われたピートを救出すべく、一年生には無謀な迷宮三層に挑むシリーズ第三巻。
剣花団の初陣にふさわしい友情が感じられる話がとてもよかった。
実際に潜るのは戦闘力に秀でたオリバー、ナナオ、シェラの三名だったが、お留守番組の知識も迷宮探索に生かされ、特にガイから託された装備は今回の探索の肝で、剣花団全員で迷宮を攻略している感がある。これで六人全員見せ場があったのかな。ガイくんだけその場に本人いなかったけどw
そして三人を導くのは、
ミリガン先輩、ただのサイコパスじゃなかったんですね。1巻のボスキャラが主人公たちを導く展開は、定番だけど好き。
と、オリバーたち一年生の冒険と成長を描くのはこれまで通りだったのだけど、今回に限っては主役は攫った側。迷宮内でちょっかいを掛けてきていた危険な先輩オフィーリア=サルヴァドーリ。
彼女に課せられた過酷な運命と、少しの救いとその後に待つ悲劇。その顛末には同情するものの、これまで重要人物だった訳でもないし、思い入れあるキャラでもないし、何でこんな丁寧にやっているんだろうという違和感がずっと付きまとっていたのだが……
ラストシーンのオリバーの様子でようやく気づいた。気の合う仲間との楽しい思い出の後に来る裏切りと破滅。これはオリバーの行く末を暗示するものだったのか。これは辛い。この結末を見て何か感じることはあっても、オリバーが自分の生き方を曲げることはないだろうと確信できてしまうのが辛い。
次回から二年生編。どんな過酷な試練が待ち構えていることやら。